ただの羊飼いとして生きて、羊飼いのまま死んでいく。そんな愚直な一生を、ロムルスは双子の弟レムスと終えるのだろうと思っていた。
テヴィレ河口の緑深い七つの丘を故郷と定め、毎日羊を追って過ごす変わらない日々の繰り返し。幼いころからレムスと共に、周辺の羊飼いや部族の中で頭角を現し、いつしか顔役として慕われるようにもなった。
いつも周囲には仲間の羊飼いが共にあり、そろそろ気の利いた従順な娘を妻に迎え、生まれた子供に羊の追い方を教えながら、老いていく。
静かな、それでも柔らかな幸せに満ち足りた人生だ。
それは、突然に奪われてしまった。
「レムスがアルバ・ロンガの兵に連れていかれた」
仲間の羊飼いから話を聞いたのは、近隣の放牧地域で起きた仲間同士のいさかいを、顔役として仲裁した帰りの事だった。
アルバ・ロンガ兵は訳も告げず双子2人の姿を探し、名乗り上げたレムスを叩きのめすと引き上げたらしい。
テヴィレ川上流の山間部にある都市国家アルバ・ロンガは、アムリウス王の統治する古都市だ。ロムルスも、レムスと共に商いに訪れることはあるが、儲けを得ることもない全うなものだ。正直、何の咎を問われているのか、皆目検討がつかなかった。
親父が昔話を語るまでは。
いや、今となっては養父であったことも明かされたのだが。
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟
・アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王
■用語
・都市国家アルバ・ロンガ
テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
アムリウス王は13代目。