-建国王ロムルス-
神話では、彼が半神半人であったと語られている。
軍神マールスを父に、都市国家アルバ・ロンガの王女であり女神ウェスタを奉じる巫女レア・シルウィアを母に生誕したロムルスは、双子の兄としてアルバ・ロンガの玉座を継承する筈であった。
しかし、軍神マールスは試練なく玉座が手渡される事を認めなかった。
前王プロカスの病死と喪を発するためにアルバ・ロンガ市民の前に姿を現したのは、世継ぎの王女シルウィアではなく、叔父のアムリウスであった。彼は父王を失ったシルウィア王女がプロカス王の魂を弔うために女神ウェスタの巫女として神殿に入ったことを告げると、王女に代わり王位の継承を宣言した。
巫女は純潔を強いられる。父王の病死を機に、玉座を簒奪した僭王アムリウスは、直系のシルウィアを神殿に幽閉することで自身の未来の安全を買ったのだ。
かくして王女シルウィアはウェスタ神殿にその生を閉じ込められた。
しかし4年後、事態は変化する。
シルウィアが巫女の儀式を休むようになり、その姿を人前に見せなくなったのだ。
当初はその境遇から放置されていたが、やがてある噂が流れ始める。曰く、シルウィアの懐妊である。そもそもウェスタ神殿は男が赴くことができないよう衛兵に出入りを監視されている。ありえない噂話の筈だが、伝え聞いて複雑な面持ちをした僭王アムリウスは、自ら神殿の奥向きに確認に向かう。
そこで見たものは、その両腕に赤子を二人抱えて母乳を与えているシルウィアの姿だった。
神話では、テヴィレ河畔で水浴びをしていたシルウィアの姿に心動かされたマールス神が、彼女を眠りに誘い、その間に子を成したと伝える。一方で歴史は、彼女と接触できる男は僭王アムリウスのみであったことから、彼こそ双子の父であったとも語っている。
双子の赤子はシルウィアの手から奪われた。
僭王アムリウスは双子とシルウィアの死刑を命じるが、自身の娘アント王女の身を挺した懇願により指示を撤回した。
翌日、双子は生きたまま籠に入れられてテヴィレ川に流され、その行く末を天に委ねられた。
シルウィアは巫女の身で純潔の戒律を犯したことを罪に問われ、牢獄に幽閉され廃棄王女となった。
こうして物語は終焉を迎える筈であった。
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟。
・アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王。
・レア・シルウィア
都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女。
双子の兄弟ロムルスとレムスを産み落とすが、アムリウス王に
奪われ、テヴィレ川に捨てられた。
・アント
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。
■用語
・都市国家アルバ・ロンガ
テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
アムリウス王は13代目。
・軍神マールス
農耕と戦の神。
序章:神話と歴史は野望の結果 第2話
Author: 遼進 /
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