双子のお茶会《第4回:ポエニ戦争前夜》

Author: 遼進 /

弟 :レムスとぉ~
兄 :ロムルスの・・・。
双子:双子のお茶会のコ~ナ~
兄 :・・・お前が望むなら、俺はこの方法を続けよう。それはお前に対する贖罪でもある。
弟 :重いよ、兄さん。気持ちは判るけどさ・・・逆に前回の件は誤るよ。
兄 :いや、良いのだ。それでは今回のお題は?
弟 :「ポエニ戦争」だね。やっと、ここまできたよ。それにしても、随分とかわいらしい名称だけど、「ポエニ」ってどういう意味なのかな?
兄 :ふむ、良い質問だな。ポエニとはラテン語、つまりローマ人の表現で「フェニキア人」という意味だ。この当時、フェニキア人といえば、地中海の覇者として活躍していた国家であるカルタゴを示す。
弟 :なるほど、フェニキア人の国家であるカルタゴとの戦争だから、「ポエニ戦争」というのか。・・・あれ? じゃあ今まで散々シラクサの僭主ヒエロンとか傭兵団マメルティニとかでてきていたけど、彼らは?
兄 :残念ながら、というしかないな。
弟 :ええっ~。シラクサの僭主ヒエロンなんか、すごくフューチャーされてなかったっけ。これからも活躍するかとおもったのに。
兄 :詳しくは言えぬが、ヒエロンの出番は結構あると思うぞ。彼に関する逸話は、そこそこ残されているからな。
弟 :そうなんだ。でも作者の腕で、そこまで書ききれるのかな。
兄 :それは(絶句)・・・信じろ。それしかあるまい。
弟 :ごめん兄さん、触れてはいけない話題だったね。ところで、このポエニ戦争って、どのぐらい続くの? 前回の終わりでは「長い」って書いていたけど。
兄 :これもあまり触れたくないが、紀元前264年から紀元前241年までの23年間・・・
弟 :えっ、そんなに続くの!?
兄 :・・・それが「第一次ポエニ戦争」で、「第三次ポエニ戦争」まで続く。
弟 :!
兄 :詳細な説明は出来ぬ。これからの進行に影響があるからな。ただ、1世代で終わる話ではないとだけ言っておく。
弟 :この作者、そこまで書けるのかな?
兄 :言うな。それは誰しもが「こいつ、いつまで続けるつもりだろう?」と思っていても、本人には直接言っていないのだから。
弟 :根気とやる気は尽きないことを、僕もユーピテル神に祈りを捧げる事にするよ。
兄 :祈りが届くと良いがな。さて、今回はここまでだ。余計な邪魔も入らないところで、終わるとしよう。
弟 :ああ、そういえば、現れなかったね。では皆さん、またね♪


第2章:第一次ポエニ戦争 第5話

Author: 遼進 /

 市民集会の開催と、その議題に関する情報は、フォロ・ロマーノから速やかに発信され、数日中にはローマ市内全域に知られ渡った。
 本来行われる予定であった、来年の執政官候補者の選定と共に、元老院及び執政官の作成した緒法案の承認についてはいつものことであったが、『シチリア島北東の都市メッシーナに対する同盟と支援に関する議題』の異質さは、ローマ市民の間に疑問が広がっていた。
 同盟し、支援することに対する「承認」ではなく、「議題」であることが意味することを計りかねていたが、その疑問も直ぐに解消された。
 アッピウス・クラウディウス・カウデクスとその息がかかった者達が、市民達に対して活動を始めたのだ。

 アッピウスとクラウディウス一門の積極的な世論操作は、ローマ市民の正義感を利用して、同盟と支援の承認へと向けた雰囲気を形成することに成功した。そして、積極的に市民の前で訴えることで、アッピウスの名を印象付けることにも成功した。
 市民集会は、元老院から提示されたシチリアの都市メッシーナとの同盟と、傭兵団マメルティニの支援を承認した。この支援は、翌年の執政官が軍団を率いて行われる事となる。
 翌年の執政官に選出されたアッピウスは、自らがシチリア島へ赴くことを既に決意していた。
 
 共和制ローマは、都市メッシーナとの同盟を決定し、傭兵団マメルティニに対する支援として、執政官率いる軍団の派遣を決定した。
 その情報は、シチリア島の各勢力にも伝わっていく。傭兵団マメルティニとの対決を決意していたシラクサの僭主ヒエロン、そしてシチリア島に対する野望を隠さないカルタゴ。ローマを引き込むことで生き残りをかける傭兵団マメルティニ。無法者達が、ただ生き残る為に打った策謀は、シチリア島に覇を唱えようとする者達の思惑を超え、地中海を中心とする国々の歴史にも影響を与えることとなる。
 後に「ポエニ戦争」と呼ばれる長い戦いが、今まさに始まろうとしている。

■登場人物
 ・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
  ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前264年、執政官に就任することになる。

■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。
 ・カルタゴ
  地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
  する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。


第2章:第一次ポエニ戦争 第4話

Author: 遼進 /

 傭兵団マメルティニの要請を受けてシチリアへ出兵し、都市メッシーナと同盟、ローマの保護下とするか。または要請を拒むのか。アッピウス・クラウディウス・カウデクスの提案は、この決断をローマ市民に委ねよと言っている。
 その意味を飲み込んだ元老議員達は、苦々しい思いを顔に出さずにはいられなかった様だ。
 「それは、ローマが建国されて以来、初めてのことであるな。前例がないからとは言わぬが、我ら元老院の無能さを示すことには違いあるまいて」
 大半が感じた思いを、老議員が口にした。
 「故に市民に問うわけだ。市民とて異例のことゆえに騒ぎもしようが、何も元老院の怠慢、無能をあげつらう事はせぬよ」
 アッピウスの容赦ない回答に、正面きって反論する元老院議員はいなかった。

 そもそも市民集会では、元老院や執政官の提示した事案に対する承認を行っている。つまり、法案を「承認する」か「承認しない」かを決定する場であった。そこに、「出兵する」か「出兵しない」かの判断を託そうとしているのである。
 その結果は正しくローマの利益となりうるのか。その点を問題とする議員もいたが、元老院が正しい結論を出せぬ以上、ただの戯言でしかなかった。

 元老院議会は傭兵団マメルティニ支援の判断を、市民集会へ託すことに決定した。

 元老院議事堂から帰宅したアッピウスは、父ガイウス・クラウディウス・ケントの姿を見かけると迫力のある笑みを浮かべた。
 「戦争をするぞ、父上」
 「話は聞いておるよ。出兵するか否かは市民集会で決めるのであろう? まだ判らぬのではないか」
 「市民集会は出兵することを選択するに間違いないさ。俺も手を尽くすが、市民は、窮地に追い込まれた人々を見捨てる決断をするわけなかろう。民とは、そういうものだろう」
 「物事の表面だけ見れば、そうだろうな。だが、将来を考えてもカルタゴにシチリアを奪われてはならぬ。無理をしても出兵すべきであろうな」
 解放奴隷が差し出す杯を受け取ると、アッピウスは並々と注がれたワインを飲み干す。
 「俺は来年の執政官として、軍団を率いてシチリアへ行くよ。その為に、市民集会を利用する」
 次の市民集会は、来年の執政官を決定する場でもあった。もともと有力な候補ではあったアッピウスであったが、窮地に追い込まれたマメルティニを出汁に使い、市民集会における評判を確固たるものにするべく政治利用したのだった。

■登場人物
 ・執政官ゲルグス
  紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
 ・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
  ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前265年当時、翌年の執政官の座を狙って活動していた。
 ・ガイウス・クラウディウス・ケント
  アッピウスの父。
■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。
 ・都市レッジョ・ディ・カラブリア
  シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。


第2章:第一次ポエニ戦争 第3話

Author: 遼進 /

 無法者集団が牛耳る都市メッシーナとの同盟に対するローマ元老院の嫌悪感と、シチリア島に軍団を安全に渡す為の手段の欠如。しかし、共和制ローマが外征をしない為の理由としては不十分であったのかもしれない。
 共和制ローマには、メッシーナを占拠しているマメルティニがただ滅んでいくのを放置出来ない訳も存在していた。

 「今のシチリアは、昔のようにシラクサが眼を光らせていた時代とは違うのだ。不埒な傭兵どもは、シラクサから身を守るために過去敵対した我らに頭を下げてきた。ローマが奴らを見放せば、次はカルタゴへ向かうぞ」
 「カルタゴはシチリア島の覇権を得るためならば、何でもしよう。ならば、その行く末は眼に見えている」
 「メッシーナがカルタゴに奪われる!」
 「奴らの船と技術を持ってすれば、もはやシチリア島からローマに橋がかかったも同然じゃろう」

 地中海に覇を唱える海運国家カルタゴ。
彼らがシチリア島を押さえることは、地中海を闊歩する彼らの補給拠点が、その交易路のど真ん中に出来ることを意味する。その拠点は、ローマの目と鼻の先に等しい位置となるのだ。
 その未来が実現したとき、共和制ローマの発展は終焉を迎えることとなるだろう。イタリア半島を制覇したとはいえ、その北方は広大な山岳地帯と、未開の蛮族が闊歩する地域である。容易に拡大することは不可能なのだ。
 それゆえに、シチリア島でこれ以上カルタゴの勢力を拡大させる訳にはいかなかった。

 「提案がある!」
 行き詰まり、決断を出せない重く圧し掛かる沈黙を、力漲る声が元老院議事堂内を切り裂いた。
 立ち上がるは、優雅さの中に覇気と傲慢さを隠し切ることの出来ない壮年。ローマきっての貴族クラウディウス一門の直系であるアッピウス・クラウディウス・カウデクスであった。
 「どうやら意見も出尽くし、何が問題なのかも把握できたと思われる。しかし、見識豊かな諸兄らをもってしても決断しかねるこの状況を放置すれば、悪戯に時がうつろいゆくばかりであろう」
 周囲の反応を見るが如く、ゆっくりと、また威厳を払いながら議員らを見回す姿は、「熱」そのものであった。
 「なれば、ここは市民集会へ決断を託すべきであろう! ローマ市民の民意を持って、我がローマの行く末を決めようではないか!」

■登場人物
 ・執政官ゲルグス
  紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
 ・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
  ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前265年当時、翌年の執政官の座を狙って活動していた。

■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。
 ・都市レッジョ・ディ・カラブリア
  シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。


第2章:第一次ポエニ戦争 第2話

Author: 遼進 /

 傭兵団マメルティニの使者から申し込まれた要請は、元老院議会の開催前に伝えられていた。もちろん、有力貴族に限った話ではあったが。
 それでも、議事堂にて執政官ゲルグスから告げられたマメルティニの要請は、元老院議員たちに困惑とざわめきを持って迎えられた。
 「マメルティニとは過去、レッジョ市民を悲痛な状況に陥れた無法者の集団のことである。諸君らはそれをお忘れか? 我々の軍団は奴らと戦い、海の向こうに追い払ったのだ! 関わりあう必要はない!」
 「我々とて、エピロス王ピュロスが残していった傭兵どもの討伐が終わったばかりだ。ここで出兵する余裕があるのか!?」
 共和制ローマもこの時期、平和と安寧の中にあった訳ではなかった。イタリア半島の覇権を争ったエピロス王ピュロスとの激戦は、地の利を生かした消耗戦に引き込んだ挙句、なんとか粘り勝ちを収めた。
 だが、戦後暫くしてから職にあぶれた傭兵らが結集し、ローマへの反乱を企てた。その討伐が前年に漸く終わったばかりであったのだ。
 「助けを求めて来ているのだ。しかも過去の経緯を忘れて同盟したいと言っているのだ。ここはローマの度量を見せるべきではないか?」
 「そういうことではない! 良く考えたまえ。メッシーナはどこにある? 我々が誇るローマの街道も、海の上には敷かれていないのだが、いったいどうやってメッシーナまで赴くのだ?」
 元老院を構成する有力貴族たちはその立場を省みて、冷静に、そして激しく、その思うところを口にする。しかし、普段は実質的な統治機関として諸問題を解決する賢者たちが、この問題に対して決断を出すことが出来なかった。

 問題はなにか。
 共和制ローマは法に重きを置く国家であった。
その精神において、無法者集団でもある傭兵団マメルティニとの同盟は、許容し難い雰囲気があったのだ。
 また、シチリア島の都市メッシーナに渡るには、対岸のレッジョから海を渡る必要がある。しかし、その為の手段がローマにはなかった。建国以来、周囲の氏族と戦い続け、最終的には勝利を手にしてきたローマではあったが、その軍勢は海を渡ったことがない。実質、軍船を所有していないのである。

■登場人物
 ・執政官ゲルグス
  紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。

■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。
 ・都市レッジョ・ディ・カラブリア
  シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。


第2章:第一次ポエニ戦争 第1話

Author: 遼進 /

 紀元前265年。またはローマ建国紀元489年。
 この年、共和制ローマは新たな試練を迎える。
 ローマ中心部にあるフォロ・ロマーノ。そのまさに中心といって差し支えないであろう元老院議事堂では、頭の痛い問題が持ち込まれていた。

 「父たちよ、新たに加わった者たちよ!」
 執政官グルゲスの高らかな呼びかけが、議事堂内に召集されたローマ貴族、つまり元老院議員達にかけられる。
 「私は、諸兄らに知恵を借りたい。善き道を示してほしい」
 執政官の深い悩みの元は、元老院議会の開催前、ローマにとって意図しない来訪者が訪れたことに起因する。その来訪者は、シチリア島北東部の都市メッシーナを占拠する傭兵団マメルティニからの、救援を要請する使者であった。

 使者は告げる。
 「今や、都市メッシーナは悪辣なシラクサの僭主ヒエロンの毒牙にかかる際まで追い詰められている。過去の経緯は忘れ、我らマメルティニはローマと同盟したい。速やかな回答と派兵を請う!」

 その申し出は、ローマにとって非常に回答しにくい問題であった。
 以前、傭兵団マメルティニは都市メッシーナの対岸に位置するイタリア半島の都市レッジョ・ディ・カラブリアを支配下に治めていたのだが、遡ること5年前の紀元前270年、共和制ローマは一戦してマメルティニから奪取し、これをもってイタリア半島におけるローマ支配を完了させていたのだ。
 都市レッジョにけるマメルティニの支配は、メッシーナと同様に悪辣なものであった。その支配に耐えられなくなった市民の声をきっかけに、共和制ローマは無法者集団としてマメルティニを討伐するため、軍団を送ったのだ。

■登場人物
 ・執政官ゲルグス
  紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
 ・シラクサ僭主ヒエロン
  シチリア島の有力な国家シラクサを統治する。元来、シラクサには王家が存在したが、ピュロス王の統治時代に没落。その後、市民の要望で王となったため、僭主と呼ばれる。

■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。


双子のお茶会《第3回:古代文明紹介編2》

Author: 遼進 /

弟 :レムスとぉ~
兄 :ロムルスの「双子のお茶会」のコーナーを始めるぞ
弟 :ちょっと兄さん、タイトルコールは二人でやろうってあれほど言ったのに!
兄 :んっ? そうだったか。すまぬな、許せ
弟 :(すっとぼけたふりをしているね、兄さん!?)
兄 :では、このあたりでシチリア島の状況を整理しておこうか
弟 :あぁ・・・判ったよ兄さん。いま、シチリア島は不安定な状況になっているよね。それはシチリア島北東部の港町メッシーナを占拠した傭兵団マメルティニが原因だよね。
兄 :そうだ。彼らはもともとシチリア南東部に国を構えるシラクサのアガトレスク王に仕えた傭兵達だ。アガトレスク王の死後、シラクサ議会によって切り捨てられた事をきっかけにして、メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対するにいたった。
弟 :それでもただの傭兵団程度なのに、なんで倒せないのかな?
兄 :それはシラクサが1世紀以上に渡ってカルタゴとシチリア島の覇権を競って戦っていたことにある。早くから海洋に乗り出し、地中海をほぼ制していた海洋国家カルタゴにとって、シチリア島は補給の為の港としても、地中海の完全制覇のためにも必要だった。故に、古くからシチリア島へ軍を派遣している。
弟 :我らがローマは、まだ海に到達していないというのに。
兄 :そうだ、比べるべくもない。紀元前314年時点では、カルタゴはシチリア島の3つの拠点ヘラクレイア、ミノア、ヒメラ、そして島の西1/3を手中におさめた。その時シラクサは東部全ての都市において支配が認められていた。
弟 :シラクサってただの都市国家だと思っていたけど、結構凄いね!
兄 :しかし、エピロス王ピュロスがシラクサの加勢のふりをしてシチリア島にやってきた結果、散々シチリア島を荒らしまわって撤退した後に残されたシラクサの支配地域は、島の南東部と1都市タウロメニオンだけとなった。
弟 :うわっ、ピュロス王は何しに来たんだよっ! イタリアでもシチリアでも、そしてマケドニアでも不幸な結果しか残らないよね、このひと。強いのに・・・
兄 :そんな状況で、シチリア島北東部の有力都市メッシーナを手中にしていたマメルティニは、シラクサと同様にカルタゴとも距離をとった。第三勢力として、シチリア島における勢力バランスを均衡させてしまった。
弟 :なるほど、迂闊に手を出すと残りの1つから攻撃される。結果、均衡を崩せない。
兄 :しかし、この均衡は仮初でしかない。カルタゴは強大な海洋国家で、アフリカ本国から幾らでも兵を増強できる。しかし、シラクサは追い詰められている状況であり、マメルティニからも嫌がらせを受けている。この状況は長くは続かないな。
弟 :そうか! その為にも早くマメルティニを駆逐してシラクサ東部に対する支配を取り戻して、カルタゴと対峙したい筈だよね。
兄 :だが、そんな行動をカルタゴは許さないだろう。カルタゴもまた、この均衡を早く終わらせたいと考えている。その結果が、ミラッツォの戦いだ。マメルティニの策謀に乗ったふりをして、シラクサだけでなくマメルティニの力を弱めようと画策したが、シラクサ、いやヒエロンが気付いて回避したな。
弟 :このヒエロンって武将、何気に凄い人なのかな?
兄 :ヒエロンはもともとピュロス王と親戚関係ゲロン一門の出身だ。若くして戦いの功労で将校となり、賢明さと気高い人柄から軍内部でも人気が高かった。それ故か、ピュロス王がシチリアを去る際、シラクサの市民から強い要望によって残ることになったのだから、たいしたものだろう。
弟 :そんな人でも、この状況を覆すのは難しそうだね。
兄 :そうだな。その辺りの話は本編に託すとしよう。それでは次回より章を変えて、「第2章:第一次ポエニ戦争~海を越えて~」をお待ち頂きたい。
セクストゥス:うわっ、楽しみだねぇ~
双子:いたのかよっ!


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