傭兵団マメルティニを打ち破り、都市メッシーナを解放するために出陣したヒエロン将軍は、その目的を達することなくシラクサへと撤退した。
シラクサ軍は、大きな痛手を受けたわけではい。だが、その行軍の足取りは重いものとなり、粛々とシラクサ市内へと吸い込まれていった。
意外にも、シラクサ市民は静かに、それでも非難することなくヒエロン将軍の帰還を迎え入れた。将軍は、確かに汚らしい傭兵どもを打ち滅ぼすことは出来なかった。だが、シラクサ周辺地域で略奪の限りをつくす暴漢どもを打ち払い、ミラッツォの戦いでは一戦して傭兵どもに甚大な被害を与えたではないか。市民達の思いは、帰還したヒエロンの進むべき道を示したといってよかった。
凱旋ではないが、シラクサ市民はヒエロン将軍の功績を確かに認めた。その市民の後押しの声を受け、ヒエロン将軍はシラクサの王となる事を宣言する。シラクサ議会は、議会前に集結した市民たちの要求を受け、ヒエロンによる支配を追認する。かくして、シラクサは新たな王を迎えることとなった。
シラクサの法に則って着いた地位ではない。その実力を市民に認められ、要請された故に、ヒエロンはシラクサの僭主と呼ばれることとなる。
紀元前269年、ヒエロン将軍は傭兵団マメルティニと対峙したが、カルタゴに後背を扼され、目的を達することなく帰還する。しかし、シラクサの全権を掌握しシラクサの僭主となった。
それから4年もの間、僭主ヒエロン2世はマメルティニを確実に打ち払うことが出来る時期を待ち続ける。しかし、同じ4年の間に力を回復したマメルティニは、またもや周辺地域を略奪し、シラクサの安全を脅かし始めた。
紀元前265年、ヒエロン2世は再度の出兵をシラクサ議会に宣言した。
■登場人物
・ヒエロン2世
シラクサの将軍からシラクサ市民に望まれてシラクサの僭主となった。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサと敵対して
いる。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
第1章:シチリア騒乱 第12話
Author: 遼進 /
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