弟 :レムスとぉ~
兄 :ロムルスの・・・。
双子:双子のお茶会のコ~ナ~
兄 :・・・お前が望むなら、俺はこの方法を続けよう。それはお前に対する贖罪でもある。
弟 :重いよ、兄さん。気持ちは判るけどさ・・・逆に前回の件は誤るよ。
兄 :いや、良いのだ。それでは今回のお題は?
弟 :「ポエニ戦争」だね。やっと、ここまできたよ。それにしても、随分とかわいらしい名称だけど、「ポエニ」ってどういう意味なのかな?
兄 :ふむ、良い質問だな。ポエニとはラテン語、つまりローマ人の表現で「フェニキア人」という意味だ。この当時、フェニキア人といえば、地中海の覇者として活躍していた国家であるカルタゴを示す。
弟 :なるほど、フェニキア人の国家であるカルタゴとの戦争だから、「ポエニ戦争」というのか。・・・あれ? じゃあ今まで散々シラクサの僭主ヒエロンとか傭兵団マメルティニとかでてきていたけど、彼らは?
兄 :残念ながら、というしかないな。
弟 :ええっ~。シラクサの僭主ヒエロンなんか、すごくフューチャーされてなかったっけ。これからも活躍するかとおもったのに。
兄 :詳しくは言えぬが、ヒエロンの出番は結構あると思うぞ。彼に関する逸話は、そこそこ残されているからな。
弟 :そうなんだ。でも作者の腕で、そこまで書ききれるのかな。
兄 :それは(絶句)・・・信じろ。それしかあるまい。
弟 :ごめん兄さん、触れてはいけない話題だったね。ところで、このポエニ戦争って、どのぐらい続くの? 前回の終わりでは「長い」って書いていたけど。
兄 :これもあまり触れたくないが、紀元前264年から紀元前241年までの23年間・・・
弟 :えっ、そんなに続くの!?
兄 :・・・それが「第一次ポエニ戦争」で、「第三次ポエニ戦争」まで続く。
弟 :!
兄 :詳細な説明は出来ぬ。これからの進行に影響があるからな。ただ、1世代で終わる話ではないとだけ言っておく。
弟 :この作者、そこまで書けるのかな?
兄 :言うな。それは誰しもが「こいつ、いつまで続けるつもりだろう?」と思っていても、本人には直接言っていないのだから。
弟 :根気とやる気は尽きないことを、僕もユーピテル神に祈りを捧げる事にするよ。
兄 :祈りが届くと良いがな。さて、今回はここまでだ。余計な邪魔も入らないところで、終わるとしよう。
弟 :ああ、そういえば、現れなかったね。では皆さん、またね♪
双子のお茶会《第4回:ポエニ戦争前夜》
Author: 遼進 /第2章:第一次ポエニ戦争 第5話
Author: 遼進 / 市民集会の開催と、その議題に関する情報は、フォロ・ロマーノから速やかに発信され、数日中にはローマ市内全域に知られ渡った。
本来行われる予定であった、来年の執政官候補者の選定と共に、元老院及び執政官の作成した緒法案の承認についてはいつものことであったが、『シチリア島北東の都市メッシーナに対する同盟と支援に関する議題』の異質さは、ローマ市民の間に疑問が広がっていた。
同盟し、支援することに対する「承認」ではなく、「議題」であることが意味することを計りかねていたが、その疑問も直ぐに解消された。
アッピウス・クラウディウス・カウデクスとその息がかかった者達が、市民達に対して活動を始めたのだ。
アッピウスとクラウディウス一門の積極的な世論操作は、ローマ市民の正義感を利用して、同盟と支援の承認へと向けた雰囲気を形成することに成功した。そして、積極的に市民の前で訴えることで、アッピウスの名を印象付けることにも成功した。
市民集会は、元老院から提示されたシチリアの都市メッシーナとの同盟と、傭兵団マメルティニの支援を承認した。この支援は、翌年の執政官が軍団を率いて行われる事となる。
翌年の執政官に選出されたアッピウスは、自らがシチリア島へ赴くことを既に決意していた。
共和制ローマは、都市メッシーナとの同盟を決定し、傭兵団マメルティニに対する支援として、執政官率いる軍団の派遣を決定した。
その情報は、シチリア島の各勢力にも伝わっていく。傭兵団マメルティニとの対決を決意していたシラクサの僭主ヒエロン、そしてシチリア島に対する野望を隠さないカルタゴ。ローマを引き込むことで生き残りをかける傭兵団マメルティニ。無法者達が、ただ生き残る為に打った策謀は、シチリア島に覇を唱えようとする者達の思惑を超え、地中海を中心とする国々の歴史にも影響を与えることとなる。
後に「ポエニ戦争」と呼ばれる長い戦いが、今まさに始まろうとしている。
■登場人物
・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前264年、執政官に就任することになる。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
第2章:第一次ポエニ戦争 第4話
Author: 遼進 / 傭兵団マメルティニの要請を受けてシチリアへ出兵し、都市メッシーナと同盟、ローマの保護下とするか。または要請を拒むのか。アッピウス・クラウディウス・カウデクスの提案は、この決断をローマ市民に委ねよと言っている。
その意味を飲み込んだ元老議員達は、苦々しい思いを顔に出さずにはいられなかった様だ。
「それは、ローマが建国されて以来、初めてのことであるな。前例がないからとは言わぬが、我ら元老院の無能さを示すことには違いあるまいて」
大半が感じた思いを、老議員が口にした。
「故に市民に問うわけだ。市民とて異例のことゆえに騒ぎもしようが、何も元老院の怠慢、無能をあげつらう事はせぬよ」
アッピウスの容赦ない回答に、正面きって反論する元老院議員はいなかった。
そもそも市民集会では、元老院や執政官の提示した事案に対する承認を行っている。つまり、法案を「承認する」か「承認しない」かを決定する場であった。そこに、「出兵する」か「出兵しない」かの判断を託そうとしているのである。
その結果は正しくローマの利益となりうるのか。その点を問題とする議員もいたが、元老院が正しい結論を出せぬ以上、ただの戯言でしかなかった。
元老院議会は傭兵団マメルティニ支援の判断を、市民集会へ託すことに決定した。
元老院議事堂から帰宅したアッピウスは、父ガイウス・クラウディウス・ケントの姿を見かけると迫力のある笑みを浮かべた。
「戦争をするぞ、父上」
「話は聞いておるよ。出兵するか否かは市民集会で決めるのであろう? まだ判らぬのではないか」
「市民集会は出兵することを選択するに間違いないさ。俺も手を尽くすが、市民は、窮地に追い込まれた人々を見捨てる決断をするわけなかろう。民とは、そういうものだろう」
「物事の表面だけ見れば、そうだろうな。だが、将来を考えてもカルタゴにシチリアを奪われてはならぬ。無理をしても出兵すべきであろうな」
解放奴隷が差し出す杯を受け取ると、アッピウスは並々と注がれたワインを飲み干す。
「俺は来年の執政官として、軍団を率いてシチリアへ行くよ。その為に、市民集会を利用する」
次の市民集会は、来年の執政官を決定する場でもあった。もともと有力な候補ではあったアッピウスであったが、窮地に追い込まれたマメルティニを出汁に使い、市民集会における評判を確固たるものにするべく政治利用したのだった。
■登場人物
・執政官ゲルグス
紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前265年当時、翌年の執政官の座を狙って活動していた。
・ガイウス・クラウディウス・ケント
アッピウスの父。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・都市レッジョ・ディ・カラブリア
シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。
第2章:第一次ポエニ戦争 第3話
Author: 遼進 / 無法者集団が牛耳る都市メッシーナとの同盟に対するローマ元老院の嫌悪感と、シチリア島に軍団を安全に渡す為の手段の欠如。しかし、共和制ローマが外征をしない為の理由としては不十分であったのかもしれない。
共和制ローマには、メッシーナを占拠しているマメルティニがただ滅んでいくのを放置出来ない訳も存在していた。
「今のシチリアは、昔のようにシラクサが眼を光らせていた時代とは違うのだ。不埒な傭兵どもは、シラクサから身を守るために過去敵対した我らに頭を下げてきた。ローマが奴らを見放せば、次はカルタゴへ向かうぞ」
「カルタゴはシチリア島の覇権を得るためならば、何でもしよう。ならば、その行く末は眼に見えている」
「メッシーナがカルタゴに奪われる!」
「奴らの船と技術を持ってすれば、もはやシチリア島からローマに橋がかかったも同然じゃろう」
地中海に覇を唱える海運国家カルタゴ。
彼らがシチリア島を押さえることは、地中海を闊歩する彼らの補給拠点が、その交易路のど真ん中に出来ることを意味する。その拠点は、ローマの目と鼻の先に等しい位置となるのだ。
その未来が実現したとき、共和制ローマの発展は終焉を迎えることとなるだろう。イタリア半島を制覇したとはいえ、その北方は広大な山岳地帯と、未開の蛮族が闊歩する地域である。容易に拡大することは不可能なのだ。
それゆえに、シチリア島でこれ以上カルタゴの勢力を拡大させる訳にはいかなかった。
「提案がある!」
行き詰まり、決断を出せない重く圧し掛かる沈黙を、力漲る声が元老院議事堂内を切り裂いた。
立ち上がるは、優雅さの中に覇気と傲慢さを隠し切ることの出来ない壮年。ローマきっての貴族クラウディウス一門の直系であるアッピウス・クラウディウス・カウデクスであった。
「どうやら意見も出尽くし、何が問題なのかも把握できたと思われる。しかし、見識豊かな諸兄らをもってしても決断しかねるこの状況を放置すれば、悪戯に時がうつろいゆくばかりであろう」
周囲の反応を見るが如く、ゆっくりと、また威厳を払いながら議員らを見回す姿は、「熱」そのものであった。
「なれば、ここは市民集会へ決断を託すべきであろう! ローマ市民の民意を持って、我がローマの行く末を決めようではないか!」
■登場人物
・執政官ゲルグス
紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
・アッピウス・クラウディウス・カウデクス
ローマ貴族の名門、クラウディウス一門の直系。紀元前265年当時、翌年の執政官の座を狙って活動していた。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・都市レッジョ・ディ・カラブリア
シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。
第2章:第一次ポエニ戦争 第2話
Author: 遼進 / 傭兵団マメルティニの使者から申し込まれた要請は、元老院議会の開催前に伝えられていた。もちろん、有力貴族に限った話ではあったが。
それでも、議事堂にて執政官ゲルグスから告げられたマメルティニの要請は、元老院議員たちに困惑とざわめきを持って迎えられた。
「マメルティニとは過去、レッジョ市民を悲痛な状況に陥れた無法者の集団のことである。諸君らはそれをお忘れか? 我々の軍団は奴らと戦い、海の向こうに追い払ったのだ! 関わりあう必要はない!」
「我々とて、エピロス王ピュロスが残していった傭兵どもの討伐が終わったばかりだ。ここで出兵する余裕があるのか!?」
共和制ローマもこの時期、平和と安寧の中にあった訳ではなかった。イタリア半島の覇権を争ったエピロス王ピュロスとの激戦は、地の利を生かした消耗戦に引き込んだ挙句、なんとか粘り勝ちを収めた。
だが、戦後暫くしてから職にあぶれた傭兵らが結集し、ローマへの反乱を企てた。その討伐が前年に漸く終わったばかりであったのだ。
「助けを求めて来ているのだ。しかも過去の経緯を忘れて同盟したいと言っているのだ。ここはローマの度量を見せるべきではないか?」
「そういうことではない! 良く考えたまえ。メッシーナはどこにある? 我々が誇るローマの街道も、海の上には敷かれていないのだが、いったいどうやってメッシーナまで赴くのだ?」
元老院を構成する有力貴族たちはその立場を省みて、冷静に、そして激しく、その思うところを口にする。しかし、普段は実質的な統治機関として諸問題を解決する賢者たちが、この問題に対して決断を出すことが出来なかった。
問題はなにか。
共和制ローマは法に重きを置く国家であった。
その精神において、無法者集団でもある傭兵団マメルティニとの同盟は、許容し難い雰囲気があったのだ。
また、シチリア島の都市メッシーナに渡るには、対岸のレッジョから海を渡る必要がある。しかし、その為の手段がローマにはなかった。建国以来、周囲の氏族と戦い続け、最終的には勝利を手にしてきたローマではあったが、その軍勢は海を渡ったことがない。実質、軍船を所有していないのである。
■登場人物
・執政官ゲルグス
紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・都市レッジョ・ディ・カラブリア
シチリア島メッシーナの対岸に位置する、イタリア半島の港町。紀元前270年、共和制ローマは傭兵団マメルティニと戦い、その支配権を奪った。
第2章:第一次ポエニ戦争 第1話
Author: 遼進 / 紀元前265年。またはローマ建国紀元489年。
この年、共和制ローマは新たな試練を迎える。
ローマ中心部にあるフォロ・ロマーノ。そのまさに中心といって差し支えないであろう元老院議事堂では、頭の痛い問題が持ち込まれていた。
「父たちよ、新たに加わった者たちよ!」
執政官グルゲスの高らかな呼びかけが、議事堂内に召集されたローマ貴族、つまり元老院議員達にかけられる。
「私は、諸兄らに知恵を借りたい。善き道を示してほしい」
執政官の深い悩みの元は、元老院議会の開催前、ローマにとって意図しない来訪者が訪れたことに起因する。その来訪者は、シチリア島北東部の都市メッシーナを占拠する傭兵団マメルティニからの、救援を要請する使者であった。
使者は告げる。
「今や、都市メッシーナは悪辣なシラクサの僭主ヒエロンの毒牙にかかる際まで追い詰められている。過去の経緯は忘れ、我らマメルティニはローマと同盟したい。速やかな回答と派兵を請う!」
その申し出は、ローマにとって非常に回答しにくい問題であった。
以前、傭兵団マメルティニは都市メッシーナの対岸に位置するイタリア半島の都市レッジョ・ディ・カラブリアを支配下に治めていたのだが、遡ること5年前の紀元前270年、共和制ローマは一戦してマメルティニから奪取し、これをもってイタリア半島におけるローマ支配を完了させていたのだ。
都市レッジョにけるマメルティニの支配は、メッシーナと同様に悪辣なものであった。その支配に耐えられなくなった市民の声をきっかけに、共和制ローマは無法者集団としてマメルティニを討伐するため、軍団を送ったのだ。
■登場人物
・執政官ゲルグス
紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
・シラクサ僭主ヒエロン
シチリア島の有力な国家シラクサを統治する。元来、シラクサには王家が存在したが、ピュロス王の統治時代に没落。その後、市民の要望で王となったため、僭主と呼ばれる。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
双子のお茶会《第3回:古代文明紹介編2》
Author: 遼進 /弟 :レムスとぉ~
兄 :ロムルスの「双子のお茶会」のコーナーを始めるぞ
弟 :ちょっと兄さん、タイトルコールは二人でやろうってあれほど言ったのに!
兄 :んっ? そうだったか。すまぬな、許せ
弟 :(すっとぼけたふりをしているね、兄さん!?)
兄 :では、このあたりでシチリア島の状況を整理しておこうか
弟 :あぁ・・・判ったよ兄さん。いま、シチリア島は不安定な状況になっているよね。それはシチリア島北東部の港町メッシーナを占拠した傭兵団マメルティニが原因だよね。
兄 :そうだ。彼らはもともとシチリア南東部に国を構えるシラクサのアガトレスク王に仕えた傭兵達だ。アガトレスク王の死後、シラクサ議会によって切り捨てられた事をきっかけにして、メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対するにいたった。
弟 :それでもただの傭兵団程度なのに、なんで倒せないのかな?
兄 :それはシラクサが1世紀以上に渡ってカルタゴとシチリア島の覇権を競って戦っていたことにある。早くから海洋に乗り出し、地中海をほぼ制していた海洋国家カルタゴにとって、シチリア島は補給の為の港としても、地中海の完全制覇のためにも必要だった。故に、古くからシチリア島へ軍を派遣している。
弟 :我らがローマは、まだ海に到達していないというのに。
兄 :そうだ、比べるべくもない。紀元前314年時点では、カルタゴはシチリア島の3つの拠点ヘラクレイア、ミノア、ヒメラ、そして島の西1/3を手中におさめた。その時シラクサは東部全ての都市において支配が認められていた。
弟 :シラクサってただの都市国家だと思っていたけど、結構凄いね!
兄 :しかし、エピロス王ピュロスがシラクサの加勢のふりをしてシチリア島にやってきた結果、散々シチリア島を荒らしまわって撤退した後に残されたシラクサの支配地域は、島の南東部と1都市タウロメニオンだけとなった。
弟 :うわっ、ピュロス王は何しに来たんだよっ! イタリアでもシチリアでも、そしてマケドニアでも不幸な結果しか残らないよね、このひと。強いのに・・・
兄 :そんな状況で、シチリア島北東部の有力都市メッシーナを手中にしていたマメルティニは、シラクサと同様にカルタゴとも距離をとった。第三勢力として、シチリア島における勢力バランスを均衡させてしまった。
弟 :なるほど、迂闊に手を出すと残りの1つから攻撃される。結果、均衡を崩せない。
兄 :しかし、この均衡は仮初でしかない。カルタゴは強大な海洋国家で、アフリカ本国から幾らでも兵を増強できる。しかし、シラクサは追い詰められている状況であり、マメルティニからも嫌がらせを受けている。この状況は長くは続かないな。
弟 :そうか! その為にも早くマメルティニを駆逐してシラクサ東部に対する支配を取り戻して、カルタゴと対峙したい筈だよね。
兄 :だが、そんな行動をカルタゴは許さないだろう。カルタゴもまた、この均衡を早く終わらせたいと考えている。その結果が、ミラッツォの戦いだ。マメルティニの策謀に乗ったふりをして、シラクサだけでなくマメルティニの力を弱めようと画策したが、シラクサ、いやヒエロンが気付いて回避したな。
弟 :このヒエロンって武将、何気に凄い人なのかな?
兄 :ヒエロンはもともとピュロス王と親戚関係ゲロン一門の出身だ。若くして戦いの功労で将校となり、賢明さと気高い人柄から軍内部でも人気が高かった。それ故か、ピュロス王がシチリアを去る際、シラクサの市民から強い要望によって残ることになったのだから、たいしたものだろう。
弟 :そんな人でも、この状況を覆すのは難しそうだね。
兄 :そうだな。その辺りの話は本編に託すとしよう。それでは次回より章を変えて、「第2章:第一次ポエニ戦争~海を越えて~」をお待ち頂きたい。
セクストゥス:うわっ、楽しみだねぇ~
双子:いたのかよっ!
第1章:シチリア騒乱 第12話
Author: 遼進 / 傭兵団マメルティニを打ち破り、都市メッシーナを解放するために出陣したヒエロン将軍は、その目的を達することなくシラクサへと撤退した。
シラクサ軍は、大きな痛手を受けたわけではい。だが、その行軍の足取りは重いものとなり、粛々とシラクサ市内へと吸い込まれていった。
意外にも、シラクサ市民は静かに、それでも非難することなくヒエロン将軍の帰還を迎え入れた。将軍は、確かに汚らしい傭兵どもを打ち滅ぼすことは出来なかった。だが、シラクサ周辺地域で略奪の限りをつくす暴漢どもを打ち払い、ミラッツォの戦いでは一戦して傭兵どもに甚大な被害を与えたではないか。市民達の思いは、帰還したヒエロンの進むべき道を示したといってよかった。
凱旋ではないが、シラクサ市民はヒエロン将軍の功績を確かに認めた。その市民の後押しの声を受け、ヒエロン将軍はシラクサの王となる事を宣言する。シラクサ議会は、議会前に集結した市民たちの要求を受け、ヒエロンによる支配を追認する。かくして、シラクサは新たな王を迎えることとなった。
シラクサの法に則って着いた地位ではない。その実力を市民に認められ、要請された故に、ヒエロンはシラクサの僭主と呼ばれることとなる。
紀元前269年、ヒエロン将軍は傭兵団マメルティニと対峙したが、カルタゴに後背を扼され、目的を達することなく帰還する。しかし、シラクサの全権を掌握しシラクサの僭主となった。
それから4年もの間、僭主ヒエロン2世はマメルティニを確実に打ち払うことが出来る時期を待ち続ける。しかし、同じ4年の間に力を回復したマメルティニは、またもや周辺地域を略奪し、シラクサの安全を脅かし始めた。
紀元前265年、ヒエロン2世は再度の出兵をシラクサ議会に宣言した。
■登場人物
・ヒエロン2世
シラクサの将軍からシラクサ市民に望まれてシラクサの僭主となった。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサと敵対して
いる。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
第1章:シチリア騒乱 第11話
Author: 遼進 / ミラッツォの戦いを前に傭兵団マメルティニが描いた謀略では、布陣したシラクサ軍の後方からカルタゴ軍が急襲、混乱したところをマメルティニが挟撃をかけて殲滅する予定であった。
しかし、ミラッツォ郊外にシラクサ軍が布陣しても、一向にカルタゴ軍は姿を見せない。焦りを見せるマメルティニは、カルタゴ軍への急使を放つが、空気を読まないシラクサ軍は攻撃を開始する。
傭兵団マメルティニは、やむを得ずシラクサ軍との交戦を単独で開始することとなった。
故郷を略奪され、踏み躙られ続けたシラクサ軍は、怒りと復讐という味付けによって非情に士気高く、ひるがえって仕掛けた謀略が空振りに終わったマメルティニは終始混乱気味であった。
はやり気味のシラクサ軍を抑えつつも、本陣にて敵陣を観察していたヒエロン将軍は首を傾げた。
「やつら、どうも反応が鈍いな」
「所詮、荒くれ者どもです。このようなものでしょう」
「薄気味悪いな。伏兵がいるかも知れん。念のため周辺を確認させよ」
敵陣の動きの悪さが、援軍ないし伏兵の動きを待っている為なのではと訝ったヒエロン将軍は、斥候を四方に放つ。しかし、結果を待つことなく攻勢を続け、斥候が戻る前にマメルティニを打ち破った。
「追撃せよ! 奴らに生きて再びメッシーナの地を踏ませるなっ!」
「おうっ!」
一路メッシーナへ向けて壊走するマメルティニに対し、ヒエロン将軍は騎馬隊を先頭に追撃を開始した。
しかし、追撃中に斥候がヒエロン将軍の下へと戻ってきた。
「将軍! 後方よりカルタゴ軍が迫っておりますっ!」
「しまったっ! 奴らの狙いはそれか。しかし、タイミングが悪いところを見ると、マメルティニの奴らもカルタゴに一杯食わされたな」
ヒエロン将軍は即座に軍を反転し、カルタゴ軍に向けて布陣する。
シラクサ軍がマメルティニの追撃を諦め、反転してカルタゴ軍に向け布陣した事を確認すると、カルタゴ軍は西方の支配地域へと軍を引いた。
「今回は、ここまでだ。撤収するぞ」
「ここまで来て引き返すのですか!? このままメッシーナへ向かうべきです!」
「分からないのか。メッシーナを攻めれば、カルタゴ軍がまた後方から襲ってくるぞ。その備えが出来ていない以上、進撃は無駄だ」
ヒエロン将軍も苦々しい思いを隠さずに撤退を宣言した。
■登場人物
・ヒエロン将軍
シラクサ軍を統括する将軍。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサの前僭主
アガトクレスによって雇用されたが、彼の病死後にシラクサ政府によって
解雇された。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
第1章:シチリア騒乱 第10話
Author: 遼進 / この紀元前269年に行われたマメルティニ討伐戦は、結論から示すと失敗に終わった。
ヒエロン将軍に率いられたマメルティニ討伐軍は、意気軒昂にシラクサを進発し、一路、マメルティニの本拠地である都市メッシーナへと北進した。しかし、その進路は先遣していた偵察部隊からの報告により変更されることとなった。
「ヒエロン将軍! マメルティニによる略奪部隊が北西部で確認されました!」
その一報は、ヒエロンには無視できなかった。進軍後の後方を脅かされる可能性と、救援に行かなかった事によるシラクサ市民からのヒエロンへの非難の声。ヒエロンは転進せざるをえなかった。ヒエロンは行く先の変更を軍へと告げる。
「我らは救援のゆくぞ!」
「おおっ!!」
討伐軍は進路を北西へと向けた。
シラクサ軍転進の報は、都市メッシーナに駐留するマメルティニにも報告される。
「やつら、罠に嵌りましたぜ」
「これでヒエロンも終わりよ。シラクサに俺らの怒りをぶつけてやるぜ」
マメルティ傭兵団も部隊を出発させる。彼らの進路はメッシーナ西部の都市ミラッツォ。マメルティニがシラクサのヒエロン将軍を陥れる為に仕掛けた罠は、シチリア西部を支配するカルタゴとの共謀による、シラクサ軍の挟撃であった。
マメルティニはシラクサの動きを察知し、カルタゴ軍の支援を取り付けていたのだ。その為、カルタゴ軍に近い西方地域にシラクサ軍をおびき寄せる必要があったのだ。囮としてシラクサ北西部地域を荒らしまわったマメルティニ別働隊は、見事にその役目を果たした。
ヒエロン将軍率いるマメルティニ討伐軍は、囮部隊を追撃し、シラクサ北西部を経由して、都市ミラッツォでマメルティと対峙した。
ヒエロンはまだ罠の存在を知らない。ミラッツォ郊外にて対峙する傭兵団マメルティニを騎馬から見下ろし、振り上げた手を勢い良く振り下ろす。
「攻撃せよっ!」
ミラッツォの戦いが始まった。
■登場人物
・ヒエロン将軍
シラクサ軍を統括する将軍。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサの前僭主
アガトクレスによって雇用されたが、彼の病死後にシラクサ政府によって解雇
された。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
第1章:シチリア騒乱 第9話
Author: 遼進 /■登場人物
・ヒエロン将軍
元エピロス王ピュロス旗下の将軍であったが、シラクサ市民の要請に
答えてシラクサに残った将軍。義父レプティヌスは資産家で、シラク
サ議会に強い力を持っていた。
第1章:シチリア騒乱 第8話
Author: 遼進 / ヒエロン2世とマメルティニの戦いは、紀元前269年から始まる。
もともとヒエロン2世は、元の主君であったエピロス王ピュロスに従い、シチリア島へ侵攻した将軍であった。
ピュロス王は紀元前279年、イタリア半島にて繰り広げていた共和制ローマとの半島南部における勢力争いを行っていたが、限界を迎えつつあった。結果、戦争には勝利するものの、エピロスから付き従っていた親しい配下の多くを亡くし、撤退を決意したタイミングで同じマグナ・グラエキアを構成するシラクサからの救援要請を受ける。
このとき、シラクサはカルタゴの襲撃を受けており、同族のエピロス王ピュロスに救援を求めたのだが、ピュロス王の消えかけていた野心という名の炎に再び枯れた材木を投じるかの如く、新たな侵略候補を与えただけであった。
エピロス王ピュロスは、その軍勢を共和制ローマから転じて海を渡る。野心の王は、シラクサを攻囲していたカルタゴ軍に対して襲い掛かり一蹴すると、その勢いのままシチリア北西の都市マルサーラを除くカルタゴ支配地域を1年で制圧し、カルタゴ側に属していた諸都市をすべて離反させることに成功した。
シラクサからの依頼を発端としてシチリアからカルタゴ勢力を駆逐したピュロス王は、その野心を露にしてシチリア王を自称し、カルタゴとの終戦協定に乗り出したのだが、ここで躓くことになる。
その驕慢さが、シラクサに居住するギリシヤ人達に専横的な振る舞いとして非難され、シチリアからの退去を求める暴動を起こすこととなった。野望の王は、シチリアの統治の可能性を見失ったのだ。
シラクサ市民の要求に応じて、失意のうちに帰国する事となった彼の前に、今まで共に戦ってきた将軍の一人、ヒエロンが現れる。
「我が主よ。今ここに王の御前から離脱する事をお許し願いたい」
「なぜだ、ヒエロン。共に戦い、そして生き長らえたというのに」
「シラクサの市民が怯えております。彼らには、我が主が去った後に訪れるであろうカルタゴの再侵攻から身を守る術がありませぬ」
「そうか。それがお主の本心とは思えぬが、それもよかろう。許す」
紀元前275年、野心に身を焦がした王ピュロスはシチリアから去り、そしてヒエロンはシラクサの将軍として残った。
ヒエロンがシラクサに残った答えは、彼自身の野心もあるには違いなかったが、本質は別にあった。
シラクサの有力市民の娘と恋に落ちていたヒエロンは、その恋心を娘の父に利用されたのだ。ピュロス王退去後のシラクサを守るため、娘の父は市民と語らってヒエロンを引き止めた。
ヒエロンは長年の主ピュロス王と袂を分かち、シラクサの将軍として娘を娶り、その地盤を固めた。
■ 用語
・ 共和制ローマとピュロス王の戦い
イタリア半島南部のマグナ・グラエキアを構成する都市国家ターラントの
ローマからの干渉に対する反発から、エピロス王ピュロスに支援を要請
した事に端を発する一連の戦争。紀元前282年から275年の間続いた。
終始戦闘はピュロス王が優勢であったが犠牲も多く、後に割に合わない
勝利を「ピュロスの勝利」と呼ぶ。
・ シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・ カルタゴ
地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が
行き来する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。
■ 登場人物
・ ヒエロン2世
シラクサの僭主。もともとはシチリアを侵略しにきたマケドニア王ピュロス
の将軍であったが、ピュロス王のシチリア退去時にシラクサ市民から
請われ、ピュロス王の了承のもとでシラクサに残留した。
後にシラクサの有力者の娘を娶り、その勢力地盤を固め、市民の
承認を得て僭主となった。
・ ピュロス王
エピロス王。アレクサンドロス大王の戦術の後継者として評価され、
戦術のみならず、彼の大帝国を継承するべく野望を持って戦争を
繰り返した。
イタリア半島での共和制ローマとの戦い、シチリア島でのカルタゴとの
戦いには勝利するも実益が得られなかったが、その後のマケドニアとの
戦いではマケドニア王アンティゴノス2世を追放し、マケドニア王を名乗る。
しかし・・・。
第1章:シチリア騒乱 第7話
Author: 遼進 / シチリア島。
古代地中海世界におけるこの島は、マグナ・グラエキアを構成するギリシア系植民都市国家郡が古くから形成され、穏やかな気候により育まれる豊かな農作物と海上交易の中継点としてだけでなく、ギリシア文化がいち早く花開いた地域でもある。
それゆえに、各諸勢力に狙われた地域でもある。
地中海を我が海として闊歩する海洋貿易国家カルタゴも、シチリア島への影響力拡大を狙って何度も争ってきた。
紀元前265年、シチリア島南東に位置する都市国家シラクサの僭主ヒエロン2世は、長年の間悩まされていた事案に値する決断を下す。それは、ヒエロン2世の思惑を超えてシラクサの命運だけでなく、シリチア島すべての都市国家を生贄として、より大きな争いを呼び込む事となる。
シチリア島への野心を隠さず、強大な海軍力を持って地中海を席捲するフェニキア人の大国カルタゴと、イタリア半島を制覇し、強大化しつつあるラテン人の共和制ローマ。この二国の激突は、今や目前に迫っていた。
シラクサの僭主ヒエロン2世は、議会場に呼び集めた廷臣達を前に宣言した。
「マメルティニの奴らの略奪行為は、もう看過することが出来ない。一戦して追い払うだけではなく、メッシーナを奪うぞ」
傭兵団マメルティニ。
彼らはイタリア半島のカンパニア人達で結成された傭兵団であった。もともとシラクサの前領主であったアガトクレスに雇われていたのだが、紀元前289年にアガトクレスが病没すると、時のシラクサ政府により解雇されていた。
シラクサの尖兵として己が血を流してきたマメルティニの傭兵たちは、シラクサ政府の扱いに激怒した。シラクサから退去させられたマメルティニは、シラクサ近郊を略奪しながらシチリア北東部へ移動し、都市メッシーナを襲撃する。
怒り狂った傭兵団マメルティニによるメッシーナ襲撃は、悲惨の一言であった。
傭兵たちはメッシーナを包囲して降伏させた後、恭順を示しに現れたメッシーナの有力議員らに宣言する。
「成人した男をすべて集めよ」
程なくして都市の郊外に集められた男たちは、二度と愛する家族や恋人の下に帰ってこなかった。すべて傭兵たちによって惨殺されたのだった。
しかし、これは悲劇という名の舞台の幕を開ける角笛が鳴らされたに過ぎなかった。血に狂った傭兵たちは、そのままメッシーナ市街に乱入し、欲の欲するままに蹂躙する。
かくして都市メッシーナは傭兵団マメルティニによって武力制圧された。以後、周辺地域はマメルティニの手によって有らされる事となった。シラクサ政府によって裏切られた彼らの報復は、ここから始まったのだ。
■ 用語
・ 傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサの
前僭主アガトクレスによって雇用されたが、彼の病死後にシラクサ政
府によって解雇された。
・ シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
・ 僭主
本来の皇統、王統の血筋によらず、実力により君主の座を簒奪し、
身分を超えて君主となる者を指す。
■ 登場人物
・ ヒエロン2世
シラクサの僭主。もともとはシチリアを侵略しにきたマケドニア王
ピュロスの将軍であったが、ピュロス王のシチリア退去時にシラクサ
市民から請われ、ピュロス王の了承のもとでシラクサに残留した。
後にシラクサの有力者の娘を娶り、その勢力地盤を固め、市民の
承認を得て僭主となった。
・ アガトクレス
都市国家シラクサの前領主。紀元前289年の病床において、息子への
後継を拒否したため、彼の死後に後継者争いが発生した。
その隙は、シチリア島への野心を持つカルタゴに利用され、シチリア島
に対するカルタゴの支配力を強めてしまった。
双子のお茶会《第2回:古代文明紹介編1》
Author: 遼進 /
弟 :レムスとぉ~
兄 :ロムルスの!
双子:双子のお茶会のコ~ナ~
??:いぇ~い!
弟 :おまえ誰!?
セクストゥス:いゃ~、始めましてご先祖さま。最後の王の息子で~す
弟 :うわぁ、王政滅亡のきっかけじゃないか! どの面下げてきやがった(怒)
セクストゥス:えぇ~、僕のせいじゃないよ。親父の問題だよ
弟 :お前が人妻に手を出したからだよっ!
セクストゥス:ルクレーティアは最高だったよ。彼女の清楚で凛とした涼やかさを
目にしたら、手を出さない訳には
兄 :こいつはいわゆる「駄目な男」だ。説教しても意味はない
弟 :そうだね、兄さん。それに報いは受けているしね。こいつには触れずに
話を進めようか
セクストゥス:ひどいっ
†同時代の国家について
兄 :さて、王政ローマは本編の通り、紀元前509年に滅びた
弟 :滅びたといっても、政体が変わっただけだから、都市国家ローマは
健在だよね
兄 :そうだな。俺たちの国家は駄目になりかけたが、市民集会と元老院が
機能していたお陰で立ち直ることができた
セクストゥス:建国王さまが余計な仕組みを作るから・・・
兄 :(無視)さてこの時代、他の地域では、どのような国家があったか
知っているか?
弟 :有名な処だと、オリエントでアケメネス朝ペルシアが成立した時代だよね
セクストゥス:「オリエント」って?
弟 :しかたないな。この時代のオリエントといえば、大まかにはギリシアより
東の地域のことだよ。メソポタミア、ペルシアそれにエジプトも含まれるよ
兄 :話をもどすと、キュロス2世がメディア王国を滅ぼしてペルシアが成立
したのが550年とされる。広大な地域を傘下に治めていたが、紀元前
330年には滅亡する
セクストゥス:へぇ、何で?
弟 :マケドニアのアレクサンドロスに征服されたんだよっ!
セクストゥス:そいつ、誰?
弟 :うわっ、大英雄を知らないのか・・・彼はマケドニアからギリシア地域の
覇権を握ってオリエントを制覇した男だよ
兄 :かまうな。また東アジアでは、周が紀元前770年頃に弱体化し、
春秋戦国時代に突入しているな
弟 :秦の始皇帝によって統一されるのが、紀元前221年だね
兄 :なお、極東には小さな島国があるが、「縄文」と呼ばれる時代で、詳細な
記録は文字が無いため残されてない。およそ紀元前300年頃まで続く
そうだ
セクストゥス:うわっ、ダサっ
弟 :(無視)それにしても、アレクサンドロスの目がオリエントを向いていたから
良かったけど、西方(オチデント)を向いていたらローマはどうなっていた
かな
セクストゥス:そんな奴、俺と親父で追い返していたさ!
兄 :そもそも時代があっていないから無理だろう。歴史に「もしも」を
考えるのは無駄な話だとは思うが、もしマケドニアがローマを襲った
としたら、一息に飲み込まれていただろうな
弟 :国家の規模もそうだけど、彼に比類する英雄はまだいないですしね
兄 :そうだ。だがアレクサンドロスの死後、ローマにも彼に匹敵する英雄が
誕生する
セクストゥス:へぇ、誰だい?
兄 :それが、この物語のメインストーリでもある。まだ暫くは登場しないが、
その英雄とライバル二人の戦いは、アレクサンドロスの事績に匹敵
するだろう
弟 :それは楽しみだね、兄さん。・・・しかし、この作者はそこまで書き続け
られるのかな?
兄 :それは・・・(絶句)
弟 :ああっ、ごめん兄さん。そこは信じて待つことにしようか。読者の
皆さんも、気を長くして待っていてね
兄 :私からもお願いする。それでは今後も宜しくお願いしたい
セクストゥス:じゃあね~
弟 :・・・おまえ、何しに来たんだよ(嘆息)
第1章:シチリア騒乱 第6話
Author: 遼進 / 共和制ローマを取り巻く周辺地域との確執は、冬の嵐の如く容易には晴れぬ暗雲となってローマ市民の未来に立ちはだかる試練となった。しかし、国家滅亡へ誘う死神の息吹とはならなかった。
国家にも生命力がある。
一時的な衰えを見せたとはいえ、死に至る病ともいえた王者の腐敗を自ら切り捨て、新たな政治活力を手にしたローマは、今や若者の如き気力に満ちた瑞々しい活力を持っていたといえるだろう。国の内外に山積された諸問題に対しても、有能な執政官が、賢者の如き元老院が、そしてそれらを支えるローマ市民達が一丸となって乗り越えていくだろうと思わせる力があった。
そして、戦いが始まる。紀元前498年、ローマから追放された傲慢王タルクィニウスがエトルリア人のバックアップを得て、ラテン同盟諸国を率いてローマへと襲い掛かる。
第一次ラテン戦争と呼ばれるこの戦いは、紀元前496年、ローマ近郊のレギルス湖畔において共和制ローマ軍と傲慢王タルクィニウス率いるラテン諸国の決戦を迎える。
ラテン諸国軍は緒戦において負傷したタルクィニウス王に変わり、前面に都市国家トゥスクルムの王子であるマミリウスと、傲慢王タルクィニウスの息子、セクストゥスが指揮官となってローマ軍と対峙する。
一方のローマ側は、国家存亡における緊急時として、一時的に権限が強化された独裁官に任命されたアウルス・ポストゥミウス・アルブスと、その補佐である騎兵長官ティトゥス・アエブティウス・エルウァが迎え撃つ。
両者の激突は、ローマ側のタルクィニウスへの憎悪によりローマ優勢で推移するものの、マミリウス王子により騎兵長官アエブティウスが胸に傷を負ったことで騎兵部隊が一時統制を失った。
その期をラテン諸国軍は見逃さない。追放されたローマ人で構成されたタルクィニウス王率いる奇襲部隊が、ローマ軍後方より襲い掛かり、執政官経験のある指揮官を討ち取る事に成功する。後方からの同族による奇襲により、混乱状態に陥ったローマ軍であったが、独裁官ポストゥミウスは近衛の兵と下馬させた騎兵部隊を持ってタルクゥニウスを迎撃し、撃退に成功する。
激戦の末、ラテン諸国軍は打ち払われた。
傲慢王タルクィニウスは、落ち延びる事には成功したものの、翌紀元前495年、レギルス湖畔の戦いで追った傷が癒えず逃亡先で亡くなった。
ラテン諸国との散発的な戦いは以後も続いたが、紀元前493年に停戦を迎える。
その後も共和制ローマは、エトルリア、サムニウム、そしてラテン諸国との二度三度にわたる戦争が繰り広げられる。そして勝利するたびに、戦争相手の市民をローマ市民へと吸収し拡大し続けていく。結果、イタリア半島のほぼ全域が共和制ローマの統治下に治まることとなった。
そして時は流れて、紀元前265年。
共和制ローマは初めて海を越える事になる。
■用語
・独裁官
共和政ローマの公職。あらゆる領域に及ぶ強大な権限を有する政務官
であり、国家の非常事態に1人だけ任命された。独裁者の語源でもある。
なお、その任期は半年であった。
・第一次ラテン戦争
紀元前498年から493年の間にラテン諸国との間に行われた戦争。
この勝利によりローマはラテン同盟における支配的な立場を得る。
■登場人物
・ ルキウス・タルクィニウス
傲慢王とあだ名され、ローマを追放された七代ローマ王。エトルリア人。
・ セクストゥス
ルキウス・タルクィニウスの息子の一人。彼の行動が市民の怒りを買い、
一族を追放へと導く事となった。第一次ラテン戦争の決戦地、レギルス
湖畔の戦いにおいて一軍を率いてローマ軍と相対するが、敗退する。
・ アウルス・ポストゥミウス・アルブス
第一次ラテン戦争時、独裁官に任じられた。レギルス湖畔の戦いに
勝利したあと、ローマにて凱旋式を挙げ、レギッレンシスの尊称を得た。
・ ティトゥス・アエブティウス・エルウァ
独裁官に任じられたポストゥミウスの補佐官職である騎兵長官に
任じられた。
レギルス湖畔の戦いの最中、胸に重症を負うが、生還。ポストゥミウスと
共にローマで凱旋式を挙げる。
第1章:シチリア騒乱 第5話
Author: 遼進 / ローマは共和制へと移行した。
共和制となったローマの統治機構は、大きく改革されることとなったが、基本ともいえる元老院と市民集会の在りようは変わらなかった。ただ、元老院は権威を強化するため、元老院議員を二百名から三百名に増員し、新興勢力の有力な家門の長が任命された。市民集会では、市民が選出するのは王ではなく、執政官となったことである。
ローマ市民は、一人の権力者に人生の大半を振り回されることに嫌気がさしていたのだろう。専横を抑止するため、執政官は2名とされ、その任期もわずか1年とされた。
市民集会によって選出された2名の執政官は、元老院の助言を得て1年の任期の間、ローマの施政を執り行う。戦争の場合には、執政官がそれぞれ軍の指揮官となって戦った。
こうして新しい衣を纏って生まれ変わったローマは、新たな未来に向かって進み始めるのだが、その行く末は順風満帆とはいえなかった。
共和制が成立した時点で、いくつかの大きな難題が表面化したのだ。
国内に目を向けると、ローマの国力が一時的な衰退期に入ってしまっていた。エトルリア人であったタルクィニウス王を追放したことで、ローマ国内の技術力を支えていたエトルリア人勢力が減衰してしまった事が直接的に影響したのだ。
国力の衰退は、近隣諸国との同盟「ラテン同盟」にも亀裂を与える。その力で持って盟主の座を占めていたローマの衰えに、同盟諸国はその野心を隠さなかったことで国外の情勢はきな臭くなった。さらに、北方のエトルリア人都市国家郡との対立が明確化してしまう。
また、積極的にローマを狙う勢力も存在していた。追放されたタルクィニウス王は、エトルリア都市国家の後押しを得て、ローマ王への復権を狙っていたのだ。
■用語
・共和制ローマ
紀元前509年のタルクィニウス王追放により成立。イタリア中部の都市国家
から始まり、次第に周囲をローマ化して拡大していく。
・執政官(コンスル)
共和制ローマの元首。市民集会によって2名が選出される。平時は内政の
最高責任者として政務を行い、戦時は軍団の最高指揮官として軍務を
掌握し、戦場においても直接指揮を執った。
・元老院
執政官の諮問機関として、ローマ建国時からの名家や有力者の家長により
構成される。当初は100名であったが、王政期間中に200名に増員され、
共和制開始時に300名となった。実際は、外交や財政などの決定権を
掌握しており、実質的な統治機関として存在した。
第1章:シチリア騒乱 第4話
Author: 遼進 / タルクィニウスはローマ内の一部エトルリア人勢力を味方につけると、王の正装を身にまとって、武装した兵と共に元老院へ白昼乗り込み、現王セルヴィウスの出自を激しく非難した。六代王セルヴィウスは、五代王タルクィニウスの養子となる前は元奴隷であったとの噂があり、身分卑しい出自の定まらぬ者が王位にあることを切り口に、その在位を否定したのだ。
元老院が混乱する中、変事を聞きつけたセルヴィウス王が元老院へ到着する。今や老いた養父を目にしたタルクィニウスは、彼を抱え上げると元老院の外へ向かい、路上へと叩き落とす。その権力への強烈な欲求をまざまざと見せ付けられた元老院議員たちは老王を助けることもせずに震え上がっているばかりであった。
路上へ投げ捨てられたセルヴィウス王は、何とか身体を起こして、今や逆賊となった娘婿のいる元老院内へ向かおうとしたが、その背から剣に貫かれて崩れ落ちる。タルクィニウスの雇っていた暗殺者は、絶好の機会を見過ごすことなく役目を果たすと、そのまま姿をくらます。
かくして、タルクィニウスはローマ王の座に着いた。市民集会での承認を得ず、元老院の協力も求めず。
彼は先王の葬儀を禁じ、先王派の元老院議員を殺し、その施政において市民集会の声を聞かず、元老院に助言を求めることをしなかった。歴代のローマ王には無かったその傲慢さからか、次第に市民から「傲慢王タルクィニウス」と呼ばれ恐れられていくのだが、軍事的才能においては、過去のローマ王に比類するものがあった。
傲慢王は、周辺のラテン諸国との同盟「ラテン同盟」を、同盟諸国間で対等であった関係から、恫喝と交渉を巧みに使ってローマを盟主とする内容へ変質させることに成功する。また、大規模なインフラ工事と外征により、ローマをさらに発展させていく。しかし、その負担が内政において圧制となって市民を虐げ、ローマ内部の不満という圧力は次第に高まっていくこととなった。
そして、爆発するきっかけとなる事件が発生する。

傲慢王の外征中、彼の息子セクストゥスが友人の妻に横恋慕し、無理やり関係を持ったのだ。彼女は父と夫に事実を告げると、短剣を胸に突き刺して自害した。
怒りに復讐を誓った父と夫は、亡骸をフォロ・ロマーノにある演説台へ安置すると、市民へ事の次第を涙ながらに伝え、傲慢王とその一族を痛烈に非難した。その怒りは、市民の中に燻っていた傲慢王への不満という導火線に火をつけ、一気に爆発させた。
ローマで発生した変事を外征中に知った傲慢王は、近侍の兵だけを連れてローマへと急ぎ帰還する。だが、王の前にローマの城門は閉ざされたまま開くことは無かった。
市民兵の弓が王たる自分に向けられたまま、ローマから追放処分とする旨を傲慢王が聞いたとき、彼は敗北したことを悟る。
元傲慢王は、自らの家族と付き従う一部の兵をつれて、エトルリアの一都市カエレへと退去した。
これが、ローマ王政が終焉を迎えた顛末のすべてである。
■登場人物(ローマの王たちと血族)
・セルヴィウス・トゥリウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの養子でローマの六代王。
・ルキウス・タルクィニウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの孫で、
セルヴィウス・トゥリウスの娘婿。
セルヴィウスを暗殺し、市民と元老院の承認を得ずに
七代ローマ王となったが、最後は市民に拒絶され、追放された。
・セクストゥス
ルキウス・タルクィニウスの息子の一人。彼の行動が市民の怒りを買い、
一族を追放へと導く事となった。
第1章:シチリア騒乱 第3話
Author: 遼進 / ローマ最後の王であるタルクィニウスは、五代王のタルクィニウス・プリスコの孫にあたる。ローマの王位は世襲ではないため、彼がローマ王の座に着くにはその実力を市民と元老院に認められる必要があった。ならば、七代王タルクィニウスは市民と元老院に認められたのか?
答えは否である。
話は五代王タルクィニウス・プリスコの時代に戻る。彼には二人の子供がいたが、一人は養子として迎え入れていたエトルリア人の少年セルヴィウス・トゥリウスであった。この少年は成長するにつれ、優秀さを如何なく発揮し、タルクィニウス・プリスコも彼を後継者と定めて自分の娘の婿とした。
この状況を危惧し、恐れたのは四代王アンクスの実子二人であった。彼らはローマ王位を狙っていたが、現王の養子で今となっては娘婿でもあるセルヴィウスが、現王の推薦を持って王位に立候補したら勝ち目がないと判断した。
権力を志向する若者が焦った結果、起きた事態は現王の暗殺であった。
アンクスの実子たちは暗殺者を雇い、タルクィニウスの襲撃に成功したが、タルクィニウスの妻の差配によって王の死は隠匿されてしまう。王の傷が癒えるまでの間、タルクィニウスの養子セルヴィウスが政務を代行する旨が市民に発表され、王の死が告知された時には、市民と元老院は彼の養子セルヴィウス・トゥリウスが新王となることに賛成するようになっていた。
かくしてアンクス王の実子たちはローマにいられなくなり、他国へと亡命する。
その後、六代王セルヴィウスの治世も44年に渡り、都市国家ローマをより強大化させていく。そして彼もまた王位を狙う力に襲われることになる。
セルヴィウスには、二人の娘がいた。彼は自らの政治基盤を安定化させるため、兄弟として育てられていた五代王の実子の息子二人を、娘たちと娶わせた。その際、勝気な性格の王女を穏健な従兄弟に、心優しい王女を野心家の従兄弟と組み合わせた。その結果は悲劇となってしまった。勝気な王女は穏健な夫を裏切り、野心家の従兄弟と共謀してしまう。
互いの配偶者はやがて亡くなり、残された二人は再婚する。王女トゥーリアとタルクィニウス。この二人は、権力への暗い野心を赤い約束の絆として強く結びつき、やがては王政ローマを亡国へ導く事となる。
■登場人物(ローマの王たちと血族)
・ロムルス
都市国家ローマの建国王。
・ティトゥス・タティウス
サビーニ人の王。ロムルスの共同王としてローマに
迎え入れられたが、直ぐに亡くなった。
・ヌマ
サビーニ人の賢人。ローマの二代王。
・トゥルス・ホスティリス
ラテン人。ローマ三代王。
・アンクス・マルキウス
サビーニ人。ヌマの孫でもある。ローマの四代王。
・タルクィニウス・プリスコ
エトルリア人。ローマの五代王。
・セルヴィウス・トゥリウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの養子でローマの六代王。
・ルキウス・タルクィニウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの孫で、
セルヴィウス・トゥリウスの娘婿。
・王女トゥーリア
エトルリア人でセルヴィウス・トゥリウスの娘。
タルクィニウス・プリスコの孫と結婚したが、死別し、
同じ孫のルキウス・タルクィニウスと再婚する。
第1章:シチリア騒乱 第2話
Author: 遼進 /
市民権が与えられるということは、私有財産の保持し、市民集会に対する投票権含め、ローマ市民と同じ権利を持つことである。つまり、ローマ市民となる事を意味する。サビーニ人の長老達には元老院の議席も与えられたのだから、もはや双方の扱いに違いなどなかった。
この時代、戦争に勝利した側は、相手の都市を略奪し、敗者を奴隷にすることは当然の権利でもあった。それ故、この処置は異質と言える。しかし、当時のローマが置かれた情勢を考えれば、弱小国家の勢力拡大の為のやむない選択であったといえる。
だが、ローマは以後もこの方針をとり続け、結果、ローマは強大化し続けていく事となる。
建国王ロムルスの没後、ローマの王権は元老院内のラテン人派閥とサビーニ人派閥によって争われた。ロムルスの共同王であったティテゥスは、その座についてまもなく亡くなっていた事もあり、サビーニ人達は譲らなかったのだ。
散々揉めた政争の終着点として、当時、人格者として知名度の高いサビーニ人の賢人ヌマが次代の王に選任されることとなった。
ヌマは、そもそもサビーニ人がローマと同化した際、ローマに移らずに父祖の地に残っていた一人であった。それ故、ローマ元老院からの要請に対して、首を縦には振らなかったという。しかし、度重なる要請により、遂にヌマをローマに向かわせた。
当時、四十歳でローマ王となった彼は、建国してまだ歴史のない荒くれ者揃いの国家に、秩序と法律を整備する事で安定をもたらした。
ヌマの活動は、暦の改革、宗教の改革、神官組織の整備などが挙げられるが、その43年における治世において一度も戦争が行われなかったことは、その気質を表していると言える。
ヌマの穏やかな治世が終わりを告げた後、三代目の王となったのはラテン人のトゥルス・ホスティリスである。内政が充実した時代を得て、彼は拡大に乗り出す。
ラテン人の母都市でもあり、ローマに縁も深い都市国家アルバ・ロンガを破り、住民をローマへ移住させたのもトゥルスであった。
五代目に至り、その王権はエトルリア人、タルクィニウス・プリスコにわたる。彼は比較的容易に得られるローマ市民権を得るため、一族郎党を引き連れて住み着いた異邦人であった。財力のあったタルクィニウスは、着実にその力を蓄えていき、四代目の王アンクスの死後、自ら王に立候補する。
市民集会で演説し、その後押しを受けた彼は、元老院においても無事に承認を得て、王位に着いた。
彼の時代、ローマはより一層充実し、拡大される。元老院議員も百人から二百人に拡張した。既にローマの七つの丘全てに住民が居住しており、さらなる拡大のため、丘の合間に広がる湿地帯の大干拓事業が行われ、そこにエトルリア人の高い技術力がつぎ込まれた。
ローマの中心ともいえるフォロ・ロマーノが成立したのはこの時代とされている。
国家にも生命力があり、この時代の王政ローマはまさに、溢れんばかりの活力に満ちていたといえる。
だが、紀元前509年、王政ローマは七代ルキウス・タルクィニウス・スペルブスの治世を最後に崩壊する。傲慢王と呼ばれるタルクィニウスは民衆によって追放され、ローマは共和制へ移行したのだ。
■用語
・王政ローマ
紀元前753年から紀元前509年の間、七代の王によって統治された
都市国家。最後の王、傲慢王タルクィニウスが民衆により追放され、
王政ローマは共和制ローマへと変貌を遂げる。
・都市国家アルバ・ロンガ
ラテン人の母都市であり、ローマの母体でもあった。
ローマの三代王トゥルスによって滅ぼされ、名実共にその座を
ローマへ譲る事となった。
・港町オスティア
テヴィレ河口に存在した港町。
第1章:シチリア騒乱 第1話
Author: 遼進 / ローマ。
紀元前753年、この小さな都市国家がイタリア半島中部に誕生した時代は、ギリシア人の都市国家郡が繁栄している時代でもあった。その旺盛な活動により、既にイタリア南部を始め、地中海沿岸各地に植民都市を建国しており、これらは総称して「マグナ・グラエキア(大ギリシア)」と呼ばれている。
ローマの北方に目を向けると、こちらも大きな勢力が存在する。
イタリア半島北方のアルノ河からテヴィレ河を南端までを勢力範囲として、十二の都市国家で連邦を構成するエルトリア人である。彼らはイタリア中部に存在する鉱山を活用する技術力をもって、その存在を強く示していた。
また地中海を支配するのは、北アフリカの都市国家カルタゴを拠点とするフェニキア人たちであった。彼らはその航海技術によって覇を唱えていた。
地中海世界を舞台とし、これら実力を持った都市国家郡が拡大を続ける中で、王政ローマは貧しい後進国家として歴史に姿を表した。ならず者三千人によって建国されたローマが、この状況で存在することを許されたのは貧しさ故であった。力で奪ってもなんら利益を得られないため、ただ放置されていたのである。

そのどうにもならない閉塞感の中、当のローマにあまり悲壮感は感じられない。彼らは今を生きることに精一杯であり、夢中であったのかも知れない。
そんな彼らの最初の問題は、女性問題であった。
ならず者三千人で建国した国家には、そもそも若い女性が圧倒的に不足していたのである。
建国早々、早くも王政ローマ存続の危機を迎えた建国王ロムルスは一計を案じ、近隣に住むサビーニ人たちを祭りに招待する。
家族総出で訪れていたサビーニ人たちが祭りの中で油断した頃合、ロムルスの号令でローマの男たちは一斉にサビーニ人の若い女性に襲いかかった。不意をつかれたサビーニ人たちは抵抗するも力及ばず、娘らを奪われて逃げ帰るしかなかった。
当然、サビーニ人たちは建国王ロムルスに奪った娘たちを返還するよう要求した。が、ロムルスは「既に皆、我がローマの男たちと結婚した」と驚愕の回答をよこし、まるで取り合わない。サビーニ人の王ティトゥス・タティウスは戦争を決意し、男たちは娘たちを取り戻すべく武器を手に取った。
ローマ人とサビーニ人の戦いは都度4回行われ、ローマ人が優位に立っていたという。その4回目の戦いにおいて、ローマ人にさらわれていた娘たちが戦いに介入する。彼女らは、ただ攫われていたのではなく、妻として大事にされてもいたのだ。
彼女らは、既にローマの男たちに十分な愛情を抱いていたので、夫と家族が殺しあう姿を見ていられなかったのだ。
かくして、ローマ人とサビーニ人たちは矛を収めた。
サビーニ人の王は、以後の共存をロムルスに伝えたが、ロムルスは驚くべき提案を行った。
その提案は、やがて弱小の都市国家ローマを一大強国へと変貌させる一歩であったともいえる。サビーニ王ティトゥスは、その提案を受け入れた。
かくして、サビーニ人は全員七つの丘の一つであるクィリナーレの丘に移住してローマ人となり、サビーニ人の王ティトゥスは、ロムルスと共にローマを統治する共同王となったのだ。それは、併合ではなく合併といえる。彼らは支配者と被支配者の関係ではなく、ローマ人同様の市民権が与えられた。
■登場人物
・ロムルス
都市国家ローマの建国王。
・ティトゥス・タティウス
サビーニ人の王。ローマ王ロムルスのだまし討ちにあい、
一族の若い娘たちをローマ人に奪われた。
■用語
・都市国家ローマ
ラテン人三千人によって建国された弱小国家。
・マグナ・グラエキア(大ギリシア)
ギリシア人による植民年国家(ポリス)郡を総称して呼称する言葉。
・都市国家カルタゴ
フェニキア人たちの都市国家。北アフリカに位置し、
地中海の海運を一手に引き受けている。
双子のお茶会《第1回》
Author: 遼進 /弟 :「レムスとぉ~」
兄 :「ロムルスの!」
双子:「双子のお茶会のコ~ナ~」
弟 :「さて今回は、序章全7話をお読み頂いた読者の皆様に、作中で一言しか喋れなかったこのレムスが、ちょっと為になるローマの歴史をお届けします! って、扱い酷いよ、兄さん・・・」
兄 :「しょうがないだろう。俺だって嫌だったが、お前が中途半端に仕掛けた結果だ」
弟 :「そうだけどさ、兄弟なんだから殺さずに対処しようよ・・・」
兄 :「歴史変わるから無理だ」
弟 :「もう、兄さんは融通が利かないよね、ホント」
兄 :「もういいだろ。それより本筋に戻ろう」
弟 :「しょうがないなぁ。それじゃローマの歴史について振り返るね」
弟 :「ローマは紀元前753年、建国王であるロムルス、つまり兄さんが建国したんだよね」
兄 :「そうだ。俺たち双子の顛末は作中の通りで、パラティーノの丘を我が故郷とした」
弟 :「パラティーノの丘。そういえば、本文中で間違いがあったよね、兄さん」
兄 :「その通り。実は第1話の『テヴィレ河口の緑深い七つの丘を故郷と定め~』という記述は、大間違いだ」
弟 :「地図で見てもテヴィレ河口からだいたい25km程離れているよね」
兄 :「作者は勘違いをしていたようだ。途中で気づいたが掲載後だった為、放置していたようだ」
弟 :「仕方ない作者だね。僕らがこの場をかりて訂正の上、お詫びいたします」
兄 :「なお、この時点でオリンピア競技会は既に6回も開催されている」
弟 :「オリンピックの原形だね。この時も4年に1回のペースで開催されていたよね」
兄 :「記録では紀元前776年が始めてだったようだ。以降4年ごとだと計算はあう」
弟 :「話を戻すと、ローマ建国当時、兄さんは18歳だったよね。僕の死んだ年でもあるけど・・・」
兄 :「弟をこの手にかけた結果、三千人も養わなければならなくなった俺の気持ちは分かるまい」
弟 :「でも、実際どうやって国を治めたの?」
兄 :「王といっても俺一人では、知識も経験もない。だから長老達を集めて、俺に助言をしてくれる『元老院』を作った」
弟 :「元老院は、各家門の長が議員になったんだよね。当時は100人で構成されていて、『パーテル』と呼ばれていたと聞いたよ」
兄 :「そうだ。『建国の父』という意味だ。後に貴族のことを『パトリキ』というのはこの言葉に由来する」
弟 :「そうなんだ。それから、他に決めたことは?」
兄 :「王は市民集会の投票で選ぶことにした。俺も、皆が力を貸してくれたから王になっただけだからな」
弟 :「えっ? 投票で?? 兄さんの子供が王になるんじゃないの?」
兄 :「市民集会で俺の子が王に相応しいと認められたらな。だが、そうはならなかったようだ」
弟 :「王様が偉いはずなのに、これじゃ偉くないよ・・・」
兄 :「王は軍事と政治、あと祭事を生涯担当する。市民集会はローマ市民全員で構成し、王や政府の役職者を選出する。他にも王の政策を承認または否認する。それは戦争の開始と講和も同様だ」
弟 :「つまりローマは王と元老院、それと市民集会で成り立ってるんだね」
兄 :「皆の協力で俺たちは国をつくった。作った後も、皆の力が必要だった」
弟 :「なるほどね。僕だったら選ばなかった道だけど、兄さんらしいよ」
兄 :「それでも、最初は大変だったがな」
弟 :「それは後々聞いていく事にするね。それでは、今回はここまでだね」
兄 :「時間はある。ゆっくりと語っていこうか」
弟 :「皆さん、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。次回からは第1章、つまり本編に入ります」
兄 :「これから俺の大活躍をお見せする」
弟 :「いいよね、兄さんは。では皆さん、今後も宜しくお願いします~」
序章:神話と歴史は野望の結果 第7話
Author: 遼進 / 激しい雷鳴が周囲の音を打ち消した。
閲兵中の兵団を残さず薙ぎ倒すような豪雨が、不意にパラティーノの丘の麓を泥濘へと変えていく。その泥濘に倒れ付しているロムルスは、虚ろな眼で天を仰ぎ見ていた。
刹那、漆黒の天を裂く稲妻の轟きが、ロムルスの眼に力を取り戻させる。
ロムルスは、ひと時気を失っていた間に、夢を見た気がした。
それは、奪われたレムスを取り戻してから己が成し、悔やみ続けてきた昔の事を。
悔やみはただ一点、レムスを助けられなかった事。いや違う。レムスを己の手で殺した事だ。
我が同胞と頼む軍団兵の刀剣が、己の腹を突き破り屹立する様は、嫌でもレムスの死に様をロムルスに思い出させる。
己の血統を知ったレムスは、王になることに執着した。ロムルスはそのレムスを抑えることが出来なくなり、引きずられるように仲間達と国を作った。
最初は二人が王であった。だが、レムスは近しい仲間と語り、次第に勢力を増すと、事ある毎にロムルスに反発した。
その結果、レムスとロムルスは袂を分かち、ロムルスはパラティーノの丘に、レムスは隣接するアヴェンティーノの丘に移り住む。そして、悲劇は訪れる。
レムスはロムルスを襲撃したのだ。レムスが刀剣の切っ先をロムルスにむけた時、いつかこうなるだろうと思っていたロムルスは、死を甘んじて受け入れるつもりであった。
だが、レムスの眼を見た時、ロムルスの全身を恐怖が支配する。
あの眼だった。レムスが、父アムリウスを刺し貫いた時と同じ眼。
共に育ち、分かち合ってきた己が、アムリウス如き同じにしか見られていない事にロムルスは恐怖し、絶望した。そして、不意に激怒した。
レムスの振るう刀剣を強引に奪いとったロムルスが我に返ったとき、既にレムスの腹深くに刀剣は突き立てられていた。
驚愕と運命の理不尽さを宿したレムスの眼から、次第に光が失われていく。徐々に落魄していくレムスを見つめるロムルスは、息荒くもただ、呆然と佇んでいた。
それから37年間もの間、ロムルスは王として戦い続けた。
だか、今は己が民の刃をその身に受けて、地に伏している。それは、報いであるとロムルスは感じていた。最後の瞬間に夢見た過去は、忘れかけていた罪の意識を掻き立て、全身の刀傷は贖罪の証であった。
薄れ行く贖罪と救済の祈りは、急に訪れた雷雨が引くと共に、静かに消えていった。
神話は語る。
紀元前715年、閲兵中に訪れた雷雨がやむと同時に、建国王ロムルスの姿は消えていたと。人々は、元老院によって暗殺されたとも、ロムルスは天に帰ったのだとも噂した。
それは建国王ロムルスの名を冠した国家、ローマ誕生の物語。
そして、刻は流れる・・・。
■ 登場人物
・ ロムルス
都市国家ローマの建国王。弟レムスを殺害し、唯一の王となった。
紀元前715年に死去。元老院の反ロムルス派によって
暗殺されたとの噂がある。
・ レムス
ロムルスの双子の弟。王に憧れ、あせった結果、兄によって殺された。
・ アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王。ロムルスとレムスの父であるが、
二人によって殺された。
ロムルスとレムスの双子に殺害された。
■ 用語
・ 都市国家ローマ
テヴィレ川中流に位置する都市国家。紀元前753年4月に建国。
建国王ロムルスの名をとってローマと名付けられた。
序章:神話と歴史は野望の結果 第6話
Author: 遼進 / ロムルスは思索の中で一人、歩き続ける。
パラティーノの丘を囲む城壁のために切り出された岩石が、月明かりの中で深い陰影を刻む。その岩石と影が彩る道の中、一人静かに歩むその姿は孤独であることを強いられた男の、一抹の寂寥を纏っていた。
それは、三千の民を背負うことを求められた王の宿命か。
それとも、己の半身と頼んできた最愛の弟を切り捨てた罪の故か。
離れず付き従う影のごとく、陰鬱な思いがロムルスを苛み続ける。
いつ間違ったのか、如何すべきであったのかと。
血を吐くような問い掛けに答える者はない。
天空高く輝く月を見上げ、歩みを止めたロムルスに、ただ青白い光のみがふりかかっていた。
アルバ・ロンガでの戦いは、ロムルスが弟レムスを奪還し、アムリウス王を殺害することで、夜が明ける間も無く終結した。しかし、その後の統治について問題が持ち上がる。
つまり、誰が王権を掌握するのかである。
実力で己の正義を示し、血統の確かさからも、アンリ王女はロムルスにアルバ・ロンガの統治を依頼するが、ロムルスはこれを強く拒絶した。レムスもロムルスを説得したが、ロムルスはアルバ・ロンガの統治を王女アントに委ね、逃げるように軍勢を引いた。
ロムルスは怯えていたのだ。アムリウスを殺害した時のレムスの眼に宿った暗い輝きに。
しかし、アルバ・ロンガを急襲したロムルス達の勢力は、今や周辺地域に一つの勢力として認識されてしまっていた。
彼らの周囲には、彼ら以外のラテン人勢力があり、他にもエルトリア人、ギリシア人勢力が点在している。
ロムルスは仲間たちを守るため、又、レムスの強い要求から、結局自らの国を作ることになる。
ロムルスとレムスの兄弟、彼らのために集まった男たち一千、そしてその家族二千。
彼らは七つの丘に戻り、国作りを始める。
それは、ロムルスとレムスの双子に課せられた最後の試練の幕開けであり、偉大な千年帝国の最初の贄となる事を、彼らは知らなかったのだ。
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスの双子の兄で、近隣地域の羊飼いの顔役。
アルバ・ロンガ王アムリウスとシルウィアの間に生まれ、
生後間も無くテヴィレ川へ流された。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟。
・アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王。
ロムルスとレムスの双子に殺害された。
・レア・シルウィア
都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女で、
双子の兄弟ロムルスとレムスの母。
アムリウスに牢獄に閉じ込められ、獄死した。
・アント
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。
序章:神話と歴史は野望の結果 第5話
Author: 遼進 / ロムルスとレムスは、1日の間に己が素性を、諦めていた父母の消息を知った。母の所在もまた知り、しかし既に間に合わなかったことを知った。
混乱と激情が渦巻く二人は、遂に元凶である己が父、アルバ・ロンガ王アムリウスと対面する。
しかし、この対面は双子に何ももたらさなかった。
父王に対する慈愛はない。母姫に対する復讐の意欲もない。王女アントの言葉も、既にロムルスの心に残らなかった。
ただ、自らの半身が奪われるかも知れなかった恐怖と憤怒のみが、ロムルスの腕を動かした。
ロムルスとレムスの剣は、互いの絆を示すが如く、同時にアムリウスへ突き立てられた。
声もなく崩れ落ちる非情な父王の姿もまた、ロムルスにはどうでもよかった。ただ、無事に取り戻すことのできた半身、弟レムスの存在だけが、喜びと安堵をもたらした。
この時点で双子の運命は定まったのかも知れない。
軍神マールスの生贄として捧げられた犠牲は、少なかったのだろうか。
今でもロムルスは忘れることが出来ない。父アムリウスの崩れ落ちる、その姿を見下ろすレムスの姿を。レムスの眼に宿った、妖しい光を。今まで見たこともない表情で、己が半身は、兄たるロムルスにいった言葉を。
「これで俺たちは、王になる。そうだよね、兄さん」
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
アルバ・ロンガ王アムリウスとシルウィアの間に生まれ、
生後間も無くテヴィレ川へ流された。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟。
・アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王。
・レア・シルウィア
都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女。
双子の兄弟ロムルスとレムスを産み落とすが、アムリウス王に奪われ、
テヴィレ川に捨てられた。
・アント
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。
■用語
・都市国家アルバ・ロンガ
テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
アムリウス王は13代目。
序章:神話と歴史は野望の結果 第4話
Author: 遼進 / そして季節は一巡する。
今や三千に達する人々がロムルスを王と仰ぎ、付き従っている。
若干18歳にして王となったロムルスは、彼を仰ぐ羊飼いと近隣諸族のラテン人たちと共にパラティーノの丘を故郷と定め、城壁を建設していた。
深更、建設中の城壁にロムルスは一人佇み、市内を見下ろす。
孤独の王を照らす月光は、ただ青く、そして冷たい。
「俺は、間違えたのだろうか」
その想いは、都市アルバ・ロンガに私兵でもって侵攻した時からロムルスの心に宿り、ラテン人の王となってからは、常に心を侵食している。
答えは出ていた。俺は間違ったのだと。
何が正解だったのだろう。
どうしたら間違えなかったのだろう。
振り返りって思うのは、ただ尽きぬ後悔ばかり。
あの日、ロムルスを先頭にした一千の軍勢は、終結した際の勢いそのままにアルバ・ロンガへ迫った。ロムルス一人による懇願ならともかく、軍勢による即日の襲撃はアムリウス王も想定していなかったのか、城門でのアルバ・ロンガ兵の抵抗は弱く、小競り合い程度の戦闘で城門を奪うと、軍勢は市内へ突入する。
レムスの所在は直ぐに判明した。アルバ・ロンガの王女アントが、レムスの幽閉された牢獄の場所をロムルスにもたらしたのだ。
双子にとって腹違いの姉となるアント王女は、レムスの居場所を伝えるだけに留まらず、母たるレア・シルウィアもまた同じ牢獄にいる事を伝えると、ロムルスに懇願した。父王の命だけは許してほしいと。
ロムルスは月明かりの中で目を細め、冷たく輝く星を見上げる。
あの時、ロムルスは結果として王女アントの願いを無視することになった。
牢獄の中で再会し、状況を理解したレムスと二人が向かったのは、自分達にはいないと諦めていた母、シルウィアのもとであった。
母の捕らえられた扉の前で息荒く、そして震えの止まらぬ身体を無理に抑えながらも、二人は立ちすくむ。意を決したレムスが鍵を開け、ゆっくりと扉を開け放つ。
しかし、二人が見たのは朽ち落ちた骸のみ。既に獄死した、母と思われる残骸だけであった。
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
アルバ・ロンガ王アムリウスとシルウィアの間に生まれ、
生後間も無くテヴィレ川へ流された。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟。
・レア・シルウィア
都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女。
双子の兄弟ロムルス
とレムスを産み落とすが、アムリウス王に奪われ、
テヴィレ川に捨てられた。
・アント
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。
■用語
・都市国家アルバ・ロンガ
テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
アムリウス王は13代目。
