ロムルスとレムスは、1日の間に己が素性を、諦めていた父母の消息を知った。母の所在もまた知り、しかし既に間に合わなかったことを知った。
混乱と激情が渦巻く二人は、遂に元凶である己が父、アルバ・ロンガ王アムリウスと対面する。
しかし、この対面は双子に何ももたらさなかった。
父王に対する慈愛はない。母姫に対する復讐の意欲もない。王女アントの言葉も、既にロムルスの心に残らなかった。
ただ、自らの半身が奪われるかも知れなかった恐怖と憤怒のみが、ロムルスの腕を動かした。
ロムルスとレムスの剣は、互いの絆を示すが如く、同時にアムリウスへ突き立てられた。
声もなく崩れ落ちる非情な父王の姿もまた、ロムルスにはどうでもよかった。ただ、無事に取り戻すことのできた半身、弟レムスの存在だけが、喜びと安堵をもたらした。
この時点で双子の運命は定まったのかも知れない。
軍神マールスの生贄として捧げられた犠牲は、少なかったのだろうか。
今でもロムルスは忘れることが出来ない。父アムリウスの崩れ落ちる、その姿を見下ろすレムスの姿を。レムスの眼に宿った、妖しい光を。今まで見たこともない表情で、己が半身は、兄たるロムルスにいった言葉を。
「これで俺たちは、王になる。そうだよね、兄さん」
■登場人物
・ロムルス
羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
アルバ・ロンガ王アムリウスとシルウィアの間に生まれ、
生後間も無くテヴィレ川へ流された。
・レムス
羊飼い。ロムルスの双子の弟。
・アムリウス
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王。
・レア・シルウィア
都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女。
双子の兄弟ロムルスとレムスを産み落とすが、アムリウス王に奪われ、
テヴィレ川に捨てられた。
・アント
都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。
■用語
・都市国家アルバ・ロンガ
テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
アムリウス王は13代目。
序章:神話と歴史は野望の結果 第5話
Author: 遼進 /
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