序章:神話と歴史は野望の結果 第4話

Author: 遼進 /

 そして季節は一巡する。

 今や三千に達する人々がロムルスを王と仰ぎ、付き従っている。
若干18歳にして王となったロムルスは、彼を仰ぐ羊飼いと近隣諸族のラテン人たちと共にパラティーノの丘を故郷と定め、城壁を建設していた。
 深更、建設中の城壁にロムルスは一人佇み、市内を見下ろす。
 孤独の王を照らす月光は、ただ青く、そして冷たい。
 「俺は、間違えたのだろうか」
 その想いは、都市アルバ・ロンガに私兵でもって侵攻した時からロムルスの心に宿り、ラテン人の王となってからは、常に心を侵食している。

 答えは出ていた。俺は間違ったのだと。
 何が正解だったのだろう。
 どうしたら間違えなかったのだろう。
 振り返りって思うのは、ただ尽きぬ後悔ばかり。

 あの日、ロムルスを先頭にした一千の軍勢は、終結した際の勢いそのままにアルバ・ロンガへ迫った。ロムルス一人による懇願ならともかく、軍勢による即日の襲撃はアムリウス王も想定していなかったのか、城門でのアルバ・ロンガ兵の抵抗は弱く、小競り合い程度の戦闘で城門を奪うと、軍勢は市内へ突入する。
 レムスの所在は直ぐに判明した。アルバ・ロンガの王女アントが、レムスの幽閉された牢獄の場所をロムルスにもたらしたのだ。
 双子にとって腹違いの姉となるアント王女は、レムスの居場所を伝えるだけに留まらず、母たるレア・シルウィアもまた同じ牢獄にいる事を伝えると、ロムルスに懇願した。父王の命だけは許してほしいと。

 ロムルスは月明かりの中で目を細め、冷たく輝く星を見上げる。
 あの時、ロムルスは結果として王女アントの願いを無視することになった。
 牢獄の中で再会し、状況を理解したレムスと二人が向かったのは、自分達にはいないと諦めていた母、シルウィアのもとであった。
 母の捕らえられた扉の前で息荒く、そして震えの止まらぬ身体を無理に抑えながらも、二人は立ちすくむ。意を決したレムスが鍵を開け、ゆっくりと扉を開け放つ。
 しかし、二人が見たのは朽ち落ちた骸のみ。既に獄死した、母と思われる残骸だけであった。

■登場人物
 ・ロムルス 
  羊飼い。レムスと双子の兄。近隣地域の羊飼いの顔役。
  アルバ・ロンガ王アムリウスとシルウィアの間に生まれ、
  生後間も無くテヴィレ川へ流された。
 ・レムス
  羊飼い。ロムルスの双子の弟。
 ・レア・シルウィア
  都市国家アルバ・ロンガの12代目の王プロカスの世継ぎの王女。
  双子の兄弟ロムルス
  とレムスを産み落とすが、アムリウス王に奪われ、
  テヴィレ川に捨てられた。
 ・アント
  都市国家アルバ・ロンガの13代目の王アムリウスの娘。

■用語
 ・都市国家アルバ・ロンガ
  テヴィレ川上流に位置するアルバーノ山地に位置する都市国家。
  テヴィレ河口より南東約30kmの位置する湖のほとりに建国された。
  アムリウス王は13代目。

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