第1章:シチリア騒乱 第10話

Author: 遼進 /

 この紀元前269年に行われたマメルティニ討伐戦は、結論から示すと失敗に終わった。

 ヒエロン将軍に率いられたマメルティニ討伐軍は、意気軒昂にシラクサを進発し、一路、マメルティニの本拠地である都市メッシーナへと北進した。しかし、その進路は先遣していた偵察部隊からの報告により変更されることとなった。
 「ヒエロン将軍! マメルティニによる略奪部隊が北西部で確認されました!」
 その一報は、ヒエロンには無視できなかった。進軍後の後方を脅かされる可能性と、救援に行かなかった事によるシラクサ市民からのヒエロンへの非難の声。ヒエロンは転進せざるをえなかった。ヒエロンは行く先の変更を軍へと告げる。
 「我らは救援のゆくぞ!」
 「おおっ!!」
 討伐軍は進路を北西へと向けた。

 シラクサ軍転進の報は、都市メッシーナに駐留するマメルティニにも報告される。
 「やつら、罠に嵌りましたぜ」
 「これでヒエロンも終わりよ。シラクサに俺らの怒りをぶつけてやるぜ」
 マメルティ傭兵団も部隊を出発させる。彼らの進路はメッシーナ西部の都市ミラッツォ。マメルティニがシラクサのヒエロン将軍を陥れる為に仕掛けた罠は、シチリア西部を支配するカルタゴとの共謀による、シラクサ軍の挟撃であった。
 マメルティニはシラクサの動きを察知し、カルタゴ軍の支援を取り付けていたのだ。その為、カルタゴ軍に近い西方地域にシラクサ軍をおびき寄せる必要があったのだ。囮としてシラクサ北西部地域を荒らしまわったマメルティニ別働隊は、見事にその役目を果たした。

 ヒエロン将軍率いるマメルティニ討伐軍は、囮部隊を追撃し、シラクサ北西部を経由して、都市ミラッツォでマメルティと対峙した。
 ヒエロンはまだ罠の存在を知らない。ミラッツォ郊外にて対峙する傭兵団マメルティニを騎馬から見下ろし、振り上げた手を勢い良く振り下ろす。
 「攻撃せよっ!」
 ミラッツォの戦いが始まった。

■登場人物
 ・ヒエロン将軍
  シラクサ軍を統括する将軍。

■用語
 ・傭兵団マメルティニ
  イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサの前僭主
  アガトクレスによって雇用されたが、彼の病死後にシラクサ政府によって解雇
  された。
 ・シラクサ
  シチリア島南東部に位置する都市国家。
 ・カルタゴ
  地中海の覇者として、広大な通商路を開拓し、そこを通って富や人が行き来
  する海運国家。カルタゴは商業の中心地でもあった。


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