タルクィニウスはローマ内の一部エトルリア人勢力を味方につけると、王の正装を身にまとって、武装した兵と共に元老院へ白昼乗り込み、現王セルヴィウスの出自を激しく非難した。六代王セルヴィウスは、五代王タルクィニウスの養子となる前は元奴隷であったとの噂があり、身分卑しい出自の定まらぬ者が王位にあることを切り口に、その在位を否定したのだ。
元老院が混乱する中、変事を聞きつけたセルヴィウス王が元老院へ到着する。今や老いた養父を目にしたタルクィニウスは、彼を抱え上げると元老院の外へ向かい、路上へと叩き落とす。その権力への強烈な欲求をまざまざと見せ付けられた元老院議員たちは老王を助けることもせずに震え上がっているばかりであった。
路上へ投げ捨てられたセルヴィウス王は、何とか身体を起こして、今や逆賊となった娘婿のいる元老院内へ向かおうとしたが、その背から剣に貫かれて崩れ落ちる。タルクィニウスの雇っていた暗殺者は、絶好の機会を見過ごすことなく役目を果たすと、そのまま姿をくらます。
かくして、タルクィニウスはローマ王の座に着いた。市民集会での承認を得ず、元老院の協力も求めず。
彼は先王の葬儀を禁じ、先王派の元老院議員を殺し、その施政において市民集会の声を聞かず、元老院に助言を求めることをしなかった。歴代のローマ王には無かったその傲慢さからか、次第に市民から「傲慢王タルクィニウス」と呼ばれ恐れられていくのだが、軍事的才能においては、過去のローマ王に比類するものがあった。
傲慢王は、周辺のラテン諸国との同盟「ラテン同盟」を、同盟諸国間で対等であった関係から、恫喝と交渉を巧みに使ってローマを盟主とする内容へ変質させることに成功する。また、大規模なインフラ工事と外征により、ローマをさらに発展させていく。しかし、その負担が内政において圧制となって市民を虐げ、ローマ内部の不満という圧力は次第に高まっていくこととなった。
そして、爆発するきっかけとなる事件が発生する。

傲慢王の外征中、彼の息子セクストゥスが友人の妻に横恋慕し、無理やり関係を持ったのだ。彼女は父と夫に事実を告げると、短剣を胸に突き刺して自害した。
怒りに復讐を誓った父と夫は、亡骸をフォロ・ロマーノにある演説台へ安置すると、市民へ事の次第を涙ながらに伝え、傲慢王とその一族を痛烈に非難した。その怒りは、市民の中に燻っていた傲慢王への不満という導火線に火をつけ、一気に爆発させた。
ローマで発生した変事を外征中に知った傲慢王は、近侍の兵だけを連れてローマへと急ぎ帰還する。だが、王の前にローマの城門は閉ざされたまま開くことは無かった。
市民兵の弓が王たる自分に向けられたまま、ローマから追放処分とする旨を傲慢王が聞いたとき、彼は敗北したことを悟る。
元傲慢王は、自らの家族と付き従う一部の兵をつれて、エトルリアの一都市カエレへと退去した。
これが、ローマ王政が終焉を迎えた顛末のすべてである。
■登場人物(ローマの王たちと血族)
・セルヴィウス・トゥリウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの養子でローマの六代王。
・ルキウス・タルクィニウス
エトルリア人。タルクィニウス・プリスコの孫で、
セルヴィウス・トゥリウスの娘婿。
セルヴィウスを暗殺し、市民と元老院の承認を得ずに
七代ローマ王となったが、最後は市民に拒絶され、追放された。
・セクストゥス
ルキウス・タルクィニウスの息子の一人。彼の行動が市民の怒りを買い、
一族を追放へと導く事となった。
第1章:シチリア騒乱 第4話
Author: 遼進 /
Powered by Blogger.