紀元前265年。またはローマ建国紀元489年。
この年、共和制ローマは新たな試練を迎える。
ローマ中心部にあるフォロ・ロマーノ。そのまさに中心といって差し支えないであろう元老院議事堂では、頭の痛い問題が持ち込まれていた。
「父たちよ、新たに加わった者たちよ!」
執政官グルゲスの高らかな呼びかけが、議事堂内に召集されたローマ貴族、つまり元老院議員達にかけられる。
「私は、諸兄らに知恵を借りたい。善き道を示してほしい」
執政官の深い悩みの元は、元老院議会の開催前、ローマにとって意図しない来訪者が訪れたことに起因する。その来訪者は、シチリア島北東部の都市メッシーナを占拠する傭兵団マメルティニからの、救援を要請する使者であった。
使者は告げる。
「今や、都市メッシーナは悪辣なシラクサの僭主ヒエロンの毒牙にかかる際まで追い詰められている。過去の経緯は忘れ、我らマメルティニはローマと同盟したい。速やかな回答と派兵を請う!」
その申し出は、ローマにとって非常に回答しにくい問題であった。
以前、傭兵団マメルティニは都市メッシーナの対岸に位置するイタリア半島の都市レッジョ・ディ・カラブリアを支配下に治めていたのだが、遡ること5年前の紀元前270年、共和制ローマは一戦してマメルティニから奪取し、これをもってイタリア半島におけるローマ支配を完了させていたのだ。
都市レッジョにけるマメルティニの支配は、メッシーナと同様に悪辣なものであった。その支配に耐えられなくなった市民の声をきっかけに、共和制ローマは無法者集団としてマメルティニを討伐するため、軍団を送ったのだ。
■登場人物
・執政官ゲルグス
紀元前265年当時の執政官の一人。フルネームはクィントゥス・ファビウス・マクシムス・グルゲス。
・シラクサ僭主ヒエロン
シチリア島の有力な国家シラクサを統治する。元来、シラクサには王家が存在したが、ピュロス王の統治時代に没落。その後、市民の要望で王となったため、僭主と呼ばれる。
■用語
・傭兵団マメルティニ
イタリア半島のカンパニア人によって結成された傭兵団。シラクサ北東の都市メッシーナを拠点とし、シラクサと敵対している。
・シラクサ
シチリア島南東部に位置する都市国家。
第2章:第一次ポエニ戦争 第1話
Author: 遼進 /
Powered by Blogger.